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コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

11月25日(日) あがるや軍配  -スポーツ - 大相撲-

i165.jpg  「大相撲名門列伝」を名打ったベースボールマガジン社のムックが面白い。取り分けその四分冊目「立浪部屋」は強者どもがと言うべきか、迷走振りが際立っていよう。
 そもそも先の大戦を挟んで双葉山、羽黒山、名寄岩の三羽烏を戴いた立浪部屋は、独立した双葉山が新たに時津風一門を形成してなお今度は立浪四天王を擁し、伊勢浜一門との寄合所帯とはいえ立浪・伊勢浜連合として準主流派に位置していた。昭和43年からの理事制度導入においても五一門中唯一、三人の理事を排出し続けたのである。
 昭和57年からは派閥均衡型となり二名枠となるものの、現在に至る転落の端緒は横綱・双葉黒が二代目羽黒山夫人への暴行から廃業に至った昭和62年末であろう。双葉山・羽黒山の両横綱の四股名を戴いた後継者候補を喪った立浪部屋は、平成の世に至り六代立浪の女婿となった元小結・旭豊が継承するものの先代との対立から財産を巡っての訴訟にまで至っている。
 一方で、同盟を組んだ伊勢浜は横綱・照国から大関・清国へと順当に継承されたものの、総帥たる清国が昭和60年の日航機事故で一家を喪うと暗転し、以降の連合はモンゴル力士輩出の魁となった大関・旭国の大島親方が実質的に担うことになる。
 ところが落ち目の連合に更に追い討ちを駆けたのが飛んで平成22年、二所一門から脱派した貴乃花の理事選出馬でグループの基礎票七ながら連合から流出した二票が決め手となり逆転当選、替わりに落選の憂き目にあったのが大島で遂に連合は一議席に陥る。この際、流出した一人が既に先代と対立して総帥として機能しなくなっていた立浪である。
 従ってその二年後には更に混乱を極める。一枠に現職の友綱、名寄岩の系譜を引く春日山改メ雷、新たに総帥となった伊勢浜が名乗りを挙げ、伊勢浜は身を引いたものの選挙では友綱が落選。既に清国を継いだ八代伊勢浜の部屋は閉鎖され立浪一門に改称していたが、本家立浪が正式に貴乃花グループに移り、春日山・伊勢ヶ浜連合で漸く落ち着いたのも束の間、今度は肝腎の春日山総帥だった雷理事が不倫と不正経理問題で廃業し、伊勢浜が補任される。
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平成27年秋場所より
 ここに至り伊勢浜一門に再改称され整理された様に見えるが、新・伊勢浜は立浪系の大島部屋出身の元横綱・旭富士で安治川を経て伊勢浜を襲名して新たに部屋を興しているので、本来の伊勢浜一門から見れば傍流と二重に入り組んでいる。そこで二年後には新・伊勢浜より本家筋に近い友綱が理事復帰を果たし二枠を取り戻し丸く収まったと思いきや、記憶に新しい昨年二月には、保守本流・出羽一門の第四の候補たる北の湖部屋を継いだ山響という伏兵が現れ、下馬評では劣勢だった伊勢浜とともに理事当選を果たした鍵が貴乃花グループ改メ一門の影なる支援故だったのは、直後の理事長選で貴乃花支持がこの二票だったことからも明白であろう。哀れ替わりに友綱後継の、これも伊勢浜系の名門を継承した高島が敗れて又もや伊勢浜一門は新総帥の一人理事に転落した。
 想えば外国人力士の大量入門の魁たるトンガ騒動で部屋自体が傾いた大阪の名門・朝日山も、今をときめく横綱・白鳳擁する、横綱・吉葉山以来の宮城野部屋も北の湖部屋由来の師匠の異動の顛末こそあれ須く伊勢浜一門であり、換言すれば今般の騒動における主要なキャラクターは、貴乃花本人と後代の貴乃花政権を支持していた(とされる)北の湖前理事長以外は、悉く往年の立浪・伊勢浜連合絡みなのである。
 ただ世評囁かれる通り、同盟関係にあった貴乃花・伊勢浜の亀裂が今般の騒動をより大きくしているとしても、根元的には所帯は大きくとも纏まりの無かった立浪・伊勢浜連合に端的に表出した一門という名の派閥の崩壊があり、そこに新興集団たるモンゴル勢内の争いが派閥横断型に加算されることに依り、遂にコップの中の嵐が露呈したの成れの果てではなかったか。
 或いは本家・出羽の四理事が何れも三役・平幕止まりで、十理事のうち元横綱は本来反主流の高砂一門の中でも客分の八角理事長の他には渦中の伊勢浜、貴乃花のみという人材難も統治能力を欠く要因かも知れないが、それままた自らの取組に物言いを付け、理事長に成り代わったが如くに騒動への見解を述べる白鳳を筆頭に、モンゴル勢に番付を席巻されたが故であろう。必然的に次世代以降は更なる人手不足が見込まれるからこそ、些か奇矯であっても貴乃花頼みは致し方ないという解釈も成り立つ。
 公益社団化に伴い形式上、外部の権威者を理事に加えたとはいえ、大相撲は競技出身者に運営がほぼ独占されている極めて特異な職業競技集団である。ただそれはスポーツに分類するから希少さが目立つのであって、伝統芸能と考えれば全て内輪で完結していても不思議でない。
 今般を奇貨として、外国人力士の入門には暗に自粛を促していくとするならば、こうした国際化に逆行すると指弾されかねない方向性を粛々と阿吽の呼吸で進める為にも、相撲は相撲取りのものという伝統芸能には当然の、理屈無き不可侵性を取り戻さなければならない。伝統芸能としての相撲に必要なのは安易に外野から茶々を入れる"有識者"ではなく、寧ろクローズドな神秘性であって、極論すれば文科省所管から新たに文化庁下に法人格を取り直す位の意気込みや、錦絵から飛び出してきた様な力士の美を再構築する為の「体重制限」の導入といった異様な改革ではないのか。
 既に副理事として出番待ちの出羽勢の両元大関に期待を繋ぎたい。

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