コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

4月19日(水) クワマンダーを問う  -政治・経済 - 政治・経済・時事問題-

h889.jpg  19世紀に自らに有利な選挙区割りを作った知事の名とその形状が蛇に似たことから双方を併せた造語が、恣意的な区割りを意味するゲリマンダーである。
 元より今般は寧ろ機械的な数合わせが疑問視される位だからそうした批判は当たらないものの、減員区における自民党内の熾烈な選挙区争い以上に、着目すべきは余りにも多数行政区が千々に分散されたことだろう。
 勿論、区割り審の労苦は窺われ、例えばわが杉並東京八区は方南地区を割譲しているが、環七の東は生活圏が異なるという小学生期からの個人的な実感にも則しているし、埼玉で電車や河川を線引きに用いているのも恐らくは同じ文脈に基づくものだろう。
 ただ結果だけ眺めてみれば、全25中無傷で済んだのは4区のみという東京都では、昭島が切り離され新たに国立が加わる21区の様に入れ子の玉突きすら生じている。就く全国一複雑になったのが東京七区であり、そもそも中選挙区制下の東京四区、即ち中野・杉並・渋谷三区時代から東西に比べ南北の移動手段に乏しい東京西部特有の、実面積以上に縦長の悲哀が痛感される選挙区だったが、従来の中野・渋谷から中野区の北部が消えた替わりに、前述の杉並に加え品川、目黒両区の北部が追加され、実に五特別区に跨がる長細い形容はまさにクワマンダーの象徴である。
 この結果東京23区はうち15区が分割される形となり、最早自治体と選挙区は全く別物の有り様である。確かに最大1.1倍までに厳格化された英国を筆頭に行政区を考慮しない機械的な数合わせを肯定するのが世界的潮流ではあるし、アファーマティヴ・アクションで人種割にも配慮する米国の様な与件はわが国には存在しない。
 しかしながらその是非は別として国会議員が国民代表性とともに地域代表性を色濃く有するわが国においては、分割された地域は複数の地域代表への関与を余儀無くされ小選挙区制のメリットが台無しであるし、しかも今回は暫定措置に過ぎず五年後には47都道府県に一議席ずつ貼り付けてから議席配分を行う一人別枠方式を根元から改めることにより都市部は増員が必須とあらば、今回拡大された選挙区は再び切り離される蓋然性が高く、囁かれる任期満了に限り無く近い総選挙が実現すれば今般改正の賞味期限は当該一回のみに終わる可能性すら秘めている。
 都市部住民の声を正当に反映させるべく一票の格差是正自体には賛同したいが、長年培われた過去の経緯を重んじつつ変革を試みるならば、寧ろ自治体を小選挙区毎に再編成する位の地方自治制度そのものの大幅な見直しが必要なのではなかろうか。

 区割り案の勧告は総理の解散権を縛らないと改めてのアナウンスが囂しいが、その喧伝自体が制約を物語っていよう。元よりそれは首相が専権事項として解散権を行使出来るとの前提に基づいているが、必ずしも自明ではなかったのは現行憲法下初の解散となった昭和23年において、解散は内閣不信任案成立を受けた69条に限られるのか、或いは天皇陛下の国事行為に列挙された7条のみに基づくことが可能なのかの解釈が定まらず、形式的に不信任を成立させ、解散の詔勅に7条及び69条に依ると記載されたことからも明らかである。
 英国においては2011年の法改正で解散権の行使は内閣不信任成立時と下院の三分の二の同意を得た際と明示的に制限されたが、今般の解散は野党に有利とは言い難いにも拘わらずEU離脱という国家の枠組みの大きな変更を受けるとの大義名分のもとに、ほぼ全会一致で話し合い解散が認められた。この決定に矢張り首相の解散権を尊重すべきとの配慮が働いたのだとすれば、新たな一石を投じたとも言えよう。

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