コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

9月6日(火) アルファの伝説  -音楽 - 音楽-

h662.jpg  漸く発刊された「アルファの伝説 村井邦彦の時代」を読んで、勿論YMOとの関わり含め作曲家/プロデューサーたる氏の足跡は興味深かったものの、氏が去ってからのもうひとつのアルファの伝説に全く触れられていないのは、些か拍子抜けであった。
 と言うのも以前レコード・コレクター誌の連載「アルファの宴」では、アルファレコード被害者の会なる集団まで結成されたという迷走する後期アルファの軌跡が赤裸々に述べられており、書籍化を心待ちにしていたのだが、結論から言えば今般のそれは全くの別物であった。
h663.jpg  「宴」が眠ったままなのは何等かの横槍があったと邪推されるが、アルファが原盤権を持つ音源を切り売りする所謂「アルファ商法」で村井後の経営を維持してきたのは事実であろう。しかも坂本龍一氏がCMやテレビ楽曲のベスト盤を発売した際に水増しして同趣の二枚組を拵えたミディ・レコードが、後々まで様々な形で物議を醸し出しはしたし、実演家の意志には反しても、ダボハゼの如く飛び付くファン心理には叶った試みだったのに対し、希少性を装いながら内実に乏しいアルファのそれは伊東正義氏に「表紙だけ替えても」と一喝されそうな、元より村井氏の責では無いものの、臭いものに蓋をするには余りに生々しい歴史だったろう。
 ただ等しくYMOの立役者のひとりたる川添象郎氏が後年、幾度も大衆誌を賑やかした様にと言っては失礼かも知れないが、必ずしも商業性に捕らわれない高等遊民の如く存在が、経済合理性からは導き出され難い芸術を時に世に伝播させる触媒の役割を果たした時代があり、だからこそその存在を喪えば遺産の売り喰いに堕すのもまた道理なのかも知れない。
 そして良くも悪くも平準化された社会はかく嫉妬の対象に陥りかねない人種を滅失させ、彼等と彼等の余剰財力によって育まれた夜毎の宴も今や昔の物語として、美しく伝説化されたのだろう、とふとキャンティにて想う。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://kayukawa.blog41.fc2.com/tb.php/3424-0886c950
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad