コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

8月21日(金) 私は熱いお茶を飲んでる  -音楽 - J−POP-

h160.jpg  ザ・ベストテン世代には画面上に溢れる松本隆氏の名には毎週接していた筈だが、その存在を明確に認識したのはYMOから遡りはっぴいえんどのレコードを揃えてからだったろう。
 元より楽曲はメロディありきで歌詞は随伴物たる感覚の強い私にとって、「日本のロック」からアイドルに至るまで、しかも男女を問わず"代弁"する姿には、作曲のコンビを組むことも多かった筒美京平氏同様に、職業作詞家としての技量の粋には畏怖を抱いても音楽家というイメージは希薄だったのは事実である。だからこの45周年記念「風街リジェンド2015」を先行予約したのも衝動を超えるものでは無かったろう。
 しかしながら蓋を開けてみるとはっぴいえんど期からの縁が齋す出演者・楽曲を基幹としたこともあり自然と口ずさめる唄ばかり、しかも何れも一曲が短く、かつ一時の紅白歌合戦の様な代役による高尚なカラオケ大会に陥らず、オリジナルの歌い手が最大二曲毎に入れ替わり立ち替わり現れては去る余りに豪奢な構成に畏れ入る。
 還暦・太田裕美氏の変わらぬ歌唱力、「キャンティ」のさわりへの"(原田)しんじ~"の嬌声、顔は酷似しているが歌は及ばない美勇士氏の「セクシャル・バイオレット」、若かりし時分より寧ろ綺麗な早見優氏もさることながら、嘗てバンド仲間の御成婚二次会で実演した身の上には、フルコーラスの「ハイスクール・ララバイ」は感涙ものであった。
h161.jpg  箸休めの様なクラシック楽曲を挟み、ナイアガラ・トライアングルのVol 1,2からの混成部隊が現れ「A面で恋をして」からは大滝詠一氏楽曲のオンパレードとなる。冒頭、相当に凭れながら精根使い果すが如く松本氏のドラミングが奏でられたはっぴいえんどもまた当然の様に三人編制だったが、大瀧楽曲の弦アレンジを一手に引き受けていた井上鑑氏率いる風街バンドのメンバー紹介インスト曲が「スピーチバルーン」と「カナリア諸島にて」だったことに待つまでも無く、このステージが同時に大滝氏の追悼公演であることが明らかになる。
 スクリーンには「松本隆の共作者は数多いが、大瀧詠一の共作者は松本隆ただ1人である」との生前のコメントが投影されたが、松本氏にとってもまた大滝氏は無二の存在であったに違いない。
 片岡義男の映画主題歌を経て鈴木茂、小坂忠、矢野顕子と昨今の細野晴臣御大系の公演でお馴染みの顔触れが続く。何かが憑依した様にジャズ仕様の「ガラスの林檎」を唱える吉田美奈子氏に刮目の不変さが神々しさすら漂わせる斉藤由貴氏と宗教的な佇まいを経て、俳優としては既に宇野重吉氏の域に達しながら久々に歌手に戻ったオーラスの寺尾聡氏が白眉であった。
 アンコールは再びはっぴいえんどの発掘された"新曲"に続き「風を集めて」で締める。開演前に流された、リーダー渡辺氏の急逝等で欠場となったCCBはじめ、松本氏の全盛期1980年代も既に歴史の世界に入りつつあるが、「日本のロック」の始祖たるレッテルの是非は別として、はっぴいえんどが暗に目指したであろう歌謡曲そのものを彼等のフィールドに取り込むという壮大な実験の成果に道溢れ、入場に長蛇の列を為し段取りこそ今ひとつながら予想以上に音楽を満喫出来た東京国際フォーラムの夜だった。

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