コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

4月7日(火) ナショナル・アダルト  -アニメ・コミック - 漫画-

h7.jpg  今にして思えば島耕作氏の人生のピークは部長から役員に至る時分ではなかったか。課長時代は仕事よりも寧ろ女性関係の艶やかさを誇り、人間関係だけで左遷と飛び級を繰り返していた様な島氏も、古式ゆかしい製造業においては決して主流で無い宣伝畑でありながら、その出自を逆手に採ってワイン輸入やレコード・プロデュースに辣腕を奮い見事本社に凱旋昇進する過程はサラリーマンの夢物語に他ならない。ただ逆に言えば本業に従事しない身の上においてはこうした狭隘なる迂回ルートのみが栄達の途という、作者の自意識は別として現実が伺える。
 社長時代の業績不振は経済環境に拠る処も少なくなかろうが、実在のテコットの苦境を見るに付け仮想現実の近未来小説の主役が少しずつ池上彰氏の二番煎じ宜しくニュース解説の狂言回しに堕していく姿は、並行して係長以前学生に先祖帰りする迄のエネルギッシュな姿が描かれているだけに、些か蛇足的な印象は否めない。
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岩国基地(07年)
 今日は朝から弘兼憲史跡の講演に預かったがもうひとつの基地の街、岩国という出自、更には名政治漫画「加治隆介の議」の作者でもあることを重々踏まえてなお最新作「会長 島耕作」4巻を読了した身の上には焼き直しを超える内容ではなく、主張には賛同出来ても何故民間企業の会長に集団的自衛権を熱く説かれなければならないのかとの疑問符は打ち消せなかった。
 もうひとつの代表作「黄昏流星群」により色濃く顕れている様に、幼少期から漫画とともに育った世代に中高年を迎えてなお同時代性の高い漫画を提供する新しい文化、商品を築いた功績は小さくない。しかしながら同時に政治以上に経済界が男性社会であり、弘兼氏がその代弁者に他ならないのは女性同僚が図らずも述べた「あすなろ白書の旦那」という解釈に現れている。
 だからこそ島会長には徒らに政治に首を突っ込んだり年甲斐も無く老いらくの恋に励んだりせず、何故経団連を脱退して同友会代表幹事を目指すのか、そして美しく言えば財界のシンクタンク、その実個人資格を標榜するが故に企業組織という実働部隊を有せず「言いっ放し」と揶揄される同友会をして本務たる経済活性化に如何に寄与していくのかを語って欲しかった。そして何れの日にかは功成り遂げた企業人が老醜に囚われない晩年を生きる「相談役 島耕作」も是非描いて戴きたい。

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