コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

1月13日(火) 新劇の巨人  -テレビ・ラジオ - テレビドラマ-

 二十面相から洋モノ・ミステリーに目覚める時分だったのだろうが、幼年期に視聴した「そして誰もいなくなった」は子供心にも、それはないだろうという唖然たる感想を抱いた記憶がある。
 程無くクリスティー作品は定番の「Xの悲劇」から手にしたが、乱歩の美文に慣れた身の上には翻訳口調が如何とも馴染めず、YZはおろか夏樹静子氏のWにすら到達出来なかった。
 だから「オリエント急行殺人事件」も「そして~」の正反対の構造は寧ろ人口に膾炙し過ぎて承知の介であっても映像にも文献にも全貌に触れる機会に恵まれず、従って今般の三谷翻案がお初となる。
 そもそも"オリエント"なるネーミングからも、またバブル期には遠くわが国までシベリア鉄道経由到来した経緯からも、本来は欧州と東洋の窓口トルコを結ぶ豪奢旅客鉄道でありながら、満鉄に置き換えたが如く舞台設定には親和性があると言えよう。
g937.jpg  ただ多くの視聴者がトリック自体は既知のものであることを前提に、敢えて刑事コロンボ的な謎解き仕立てとした意気込みは理解出来るものの、それでも殺人事件本編はひと亘り描かざるを得ず、予定調和にしか映らない前編は何時三谷節が現れるかと待ち構えたまま二時間が経過する冗長感は否めない。しかも二夜連続にて勿体を付けた様な肝心の解決譚にも笑いの要素は少なく、これでは松嶋菜々子、沢村一樹の両氏が出演した番宣のスター千一夜擬きの方が余程期待を煽る内容だったのではないか。
 恐らくは伝統芸の雄たる野村萬斎氏に新劇のパロディとしての翻訳劇をとの見立てから端を発したのではないかと推察されるが、些か企画倒れと断ぜざるを得なかろうか。

 意図的なのかは判然としないが相前後してWOWWOWにて放映された「君となら」再演の方が余程充足感は大きかった。
 まだ結婚前に初演を鑑賞した際の妻の記憶では、美丈夫の代名詞として角野卓三氏が用いた「草刈正雄」の台詞を当の草刈氏が発する楽屋落ちもあれ、舞台慣れしていない竹内結子氏よりも斉藤由貴版が、相手役の今は亡き佐藤慶氏含め味わい深かったとしても、個人的には丸っ切り忘却の彼方にあり単純に楽しめた。
 矢張り三谷幸喜氏は舞台演出が腕の魅せ処と言うべきか、愈々野田秀樹氏宜しく旧作こそが脚光を浴びる年恰好に至りつつあるとは、まだ思いたくない。

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