コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

12月3日(水) まだ駅にいる  -政治・経済 - 衆議院選挙-

g894.jpg  国民の代表をサービス業に看倣すのは失礼に違いなかろうが、帝国議会開設間もない時分の名望政治家ならばいざ知らず、民主主義が些か成熟の域を超越したわが国において投票行動に何等かの代償が求められるならば、それは勿論高い識見や指導力、情熱という代表者に相応しい資質とその表出たるが望ましいものの、少なくとも直栽な現世利益よりは客商売らしき愛想の良さや明るさを以て対価とされる方が余程健全であろう。
 取り分け選挙は人気投票とは異なるとはいえ有権者が人間である以上、接触の度合いが多ければ多いほど親しみが湧くのは道理であり、だからこそ決起集会、遊説、組織訪問と多数公衆の面前に登場する機会における動員の意義も存在する。
 当然、わざわざ自発的に選挙事務所へ来訪する御仁はたとえ名簿の類の御土産も持ち合わせない半ば物見遊山の闖入者であっても、明らけくスパイでも無い限りはお客さんに他ならないから一定の歓待に預かって然るべきであろう。
 ただ一方で優勢ならば優勢なりに陣営を引き締め、或いは中長期的により多くの得票率を稼ぐ為に、混戦・苦戦ならばより実利的に多忙を極める選挙事務所であるから、たとえある程度顔が繋がっていても当該選挙区の有権者に勝る厚遇は期待すべきではない。
 確かに肩書だけで恭しく受け入れられる様な高位の人物ならば日中少なくとも陣営の中枢たる関係者を足留めしてアポイントを求めても先方も否応なしに、たとえ幾分の有難迷惑を感じようともサービス業として甘受せざるを得まいが、単なる末端とあらば訪問のタイミングも慎重なる選択に及ぶのは事務方としての弁えであろう。
 同時に調整業務に勤しむ日中はこちらも迂闊に出歩けないから、必然的に休日か夜半の到来に導かれる。そこには通例の企業人には相応しくない唐突感を以て先方の歓心を買いたいとの悪辣振りも無きにしもあらずだが、混雑を避け先方の落ち着いた時分に訪れるべく配慮もまた込められている。
 果たして漸くひと息付く砌に夜陰に紛れ現れる客も本来は招かれざるものなのかも知れない。それでも選挙中という互いの高揚感も左右していようか、エールの交換が如き展開に至るのは永田町周辺居住者冥利に尽きるし、ひと仕事終え寛ぎモードになった候補者本人と懇談に及ぶべく事例にも直面すればわが技巧の宜しきに明日への一助為り得るというものだろう。
 しかしながら特徴的なのは選挙運動の時間帯である。公的には朝8時から20時までだがそれは野外における拡声器の利用可否であって屋内若しくは地声であれば制約は無い。だからと言って公共交通網に乏しい非都市部では丸腰で闇夜の交叉点に立ち尽くす訳にも参らず、ホールでの集会も参加者の足に鑑みても自ずと限度があるから店仕舞いは比較的早い。また都内であっても西に進む程、恐らくは八王子や立川への通勤者も相応に存在しようから夜半までフル稼働にはなり難い。これに対し大半が日中を都心にて過ごす所謂ベッドタウンにおいては一都三県を問わず早朝と夜半の駅立ちこそが極めて有効な選挙運動となる。
 従って22時位では候補者は「まだ駅にいる」ことになるが、こうした実地見聞を経て周辺居住者の支援戦術もまた少しずつ磨かれていく。たとえ他の誰にも理解されなくとも。

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://kayukawa.blog41.fc2.com/tb.php/3146-87e2647e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad