コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

12月31日(土) 山へきたのさ ヤー  -音楽 - J−POP-

h792.jpg  賀状地獄から抜け出し30日15時にわが家をセコムに委ねるも結局18時前の、越後湯沢止まり「たにがわ」のグリーンにしかあり付けないとは些か上越新幹線を甘く見過ぎたか。或いはカレンダ配置から年末年始の短い連休故に移動も集中したのだろうか。辿り着いた雪の湯沢は父にとって二年振りである。
 とはいえスキーは四年前を以て自主的に卒業しているので、明けてリフト一回券で岩原の中腹まで登り、妻子を見送りゲレンデのカフェテラスならぬスノウマンに陣取ってファミリー仕様のポテトボックスを独り平らげる。持続されない集中力が自動的に補われるべくウルトラと音楽と交互に読書を挟んだお陰で、単調な賀状のコメント添えも珍しく捗り、年内投函の目処が見えてきた大晦日だった。
h793.jpg  プロ野球と映画界、政治と都市変遷など評論稼業の分野相互の結び付きから知識を敷衍していくのは私の常套手段だが、ウインタースポーツとの御縁はあるまいと高を括っていたら、マン30話「まぼろしの雪山」のロケ地が今は亡き程近くのTBS丸山スキー場との記述を発見する。ここ岩原にもスノボーも盛んな大衆ファミリー向けスキー場として命脈を保ってはいるものの、加山雄三氏のゲレンデとともに若者文化の最前線を担った栄光の時代があったのだ。

 昨夜は到着して温泉で身体を温めレコード大賞、本日は紅白と例年通りの展開だが、些か作業疲労か身体の節々に痛みを覚え、年越しの数時間前にダウンした。
h794.jpg  ただ事後の録画鑑賞を含め本年の歌謡新曲を初めて通聴して、ABCDに留まらぬ程に複雑化した曲構成の一方にラップをはじめ旋律の平板化という振幅を経て、単純なコード進行とメロディに回帰した結果、ヒット曲の大半がフォークの如くに響く皮肉に気付く。
 そもそも"レコード"大賞がYouTube再生回数を指標に用いている時点で自家撞着だが、強引に纏めればオーケストラでも第九でも如何様にアレンジ出来るピコ太郎もまた、確かに舞台映えするという意味では稀少に違いないが、楽曲としては単純化の極みと言えよう。
 旋律の美しさよりも唄い易さ、躍り易さに歌声喫茶的な均一性が優先されるのも、対価が著しく希薄になった音楽の経済的価値の低下に一因を求め得るならば、恰も縮小均衡の一環の如くあるのは少々寂しい。
 芸能は見目のみならず歌謡そのものもゴージャスであって欲しい。

12月28日(水) 今年の賀状地獄は

 嘗て机が二フロアに存在した時代の名残りで過去の荷物を放置していた席から遂に撤去命令が出て、ひとまずは現拠点に集約するもののそのままでは避難訓練の際、尻はおろか頭すら隠せないので勢いよく廃却に努める。
 その過程で大量に発掘された過去の名刺を整理、と言えば美しいがこちらも一挙に廃棄する。長年同じ世界に居ると現下なお知人たる人物とどの肩書、或いは如何なる所属の折りに出会っていたのか、既に忘却の彼方にある過去の情景に再び巡り会う様で暫し思い出に浸りつつ、仕事納めとともに一部は記録として留めながら大凡は再び永遠の眠りに就く。
 思えば一昨年は年末まで永田町に詰め、昨年は受験生を抱える臨戦体勢だったのに鑑みれば実に平穏な、堆く積算された書類の山も消え周囲の見晴らしが良くなって迎える年の瀬である。

h790.jpg  夜半からは一路、賀状作成に邁進しなければならない。しかしながら写真を抽出した後、バージョンの改まった筆王の写真の面取りを探索するのにひと苦労、漸く発見してなお周囲のぼかし量が昨年比大幅減となり悪戦苦闘の末に代替手法は断念して貼り付け作業に入ったところ、仮眠ののちPCが固まりゼロからやり直しとは気力も萎えよう。
 更に一旦完パケに近付きながら昨年準拠では虫眼鏡でも見えないとわが家から駄目出しを喰らい、穴埋めに用いた写真を削ぎその穴を残る写真を少しずつ拡大して塞ぎ、昨年比概ね三十枚減を以て漸く裏面の印刷に及んだのである。
 更に更に足りなくなったインクをオリンピックまで買いに走り、遂に完成に至るもここ迄で折り返し、当該年の賀状を一枚一枚捲り住所の確認とともにそもそも送付すべきかからの判断が始まる。完成しても住所録は01年来のエクセルだからこれを筆王にコンバートし、住所の区切りやら連名やら微調整して再び印刷工程に及ぶも、子供名義は表面にもコメントを施せるべく宛名を横書きにしなければならないし、議員は「様」なのに教員が「先生」とはややこしい。
 かく膨大な作業量を費やした挙げ句が大半は賀状のみの交友とはふと我に返れば虚しくなりかねないが、ひと仕事終えた充実感を以て自らを慰めてみる。

12月25日(日) 四人でいて楽しけりゃ  -地域情報 - 東海地域情報(愛知・岐阜・静岡・三重)-

h785.jpg  食に煩いと言えば美しいが、偏食揃いのわが家にはバイキングこそ相応しく、オーソドックスな日本食は宝の持ち腐れである。ただ長島を選択した際には全く意識しなかったが、三重県と言えば桑名の蛤であり現に昨夜も立派な蛤が食卓に並び朝の味噌汁も蜆の嵐だった上に、更に有り難いことには朝市宜しくロビーには売店が溢れ試食の宝庫なのである。しかも大小様々な佃煮が並び貝フリークにはやめられない止まらない、念のためひと袋は夜食として賞味したことは銘記しておくが、この朝市からゲームセンターに繋がる導線には薄っすらと見覚えがあるではないか。
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 三ホテルが長大な回廊で結ばれた温泉街にありがちな構造ではあるが、既に紐解くべき記憶は曖昧なところ確かに12年前に職責を以て訪れていることが確認されたのは、本コラムの記録性の為せる業に他ならない。
 長島PAに出現したヘリポートを恭しく拝謁しているとはドクターヘリすら珍奇であった時代が懐かしいが、既に道路族の端くれたり得ていた事実とともに「露天が五つ」との記載に鑑みれば、風呂もまた進化していることが伺われよう。
 朝方は男女入れ替わったその露天にて身を浄め、しかしながら行く先は再びなばなの里なのだから矢張り行楽地としては若干バリエーションを欠いているのは否めない。しかも昨日と打って替わり閑散としてイルミネーションが無ければ只の花の多い公園であり、ナバナだけにお花のホームラン王ですと呟いてみても面白くない。
 気を取り直して昨夜虚空に浮游していた未確認飛行物体を目指し練り歩くと、円盤上部に富士山が載ったアナクロな伸びる円形展望台が鎮座在している。花畑に場違い感夥しいのはスパーランドから移設したが故らしいが、上空からは遠大な長良川河口堰が一望されわが国河川行政の来し方が偲ばれようか。
 肥料よく色香よくのバラ園は冬眠中だったものの、異邦人ばかりのベゴニア園にてこちらもわが家らしからぬ花壇で命の洗濯と洒落混んで帰路に就いた。

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 クリスマスの朝をわが家の外で迎えたのは人の親になってからは恐らく初めてで、「今夜、私、ふぁーぜるくりすます」などと解り難い呆けに興じるまでもなく、必然的にサンタクロースなる人物は実在しないことが明らかにされてなお、子供達には暗黙の了解事項だった様である。
 夜は基督教と親和性が高いとも思えないが、高円寺では名高い沖縄料理の抱瓶に狙いを定めたのは味の濃いラフティーこそがわが子にヒットするだろうとの目論見通りであった。
 国内旅行は財布の紐が際限無く緩くなる法則を実感しつつわが家のお湯に浸り、 ケーキを囲んで三連休の幕を閉じる。

12月24日(土) 燃える温泉  -地域情報 - 東海地域情報(愛知・岐阜・静岡・三重)-

h779.jpg  名古屋で手羽先を食し、粥川家への宿泊は物理的に極めて困難なため名古屋駅近隣の安宿にて一泊したのが昨夜、明けて早々バス移動である。どうせ遠征するなら偶には中京圏の行楽地を覗いてもと目指すは長島温泉だが、スパーランドを称するからには大江戸温泉ばりの巨大なジャグジーを想定していたらあにはからんやプールは冬季休業、古式ゆかしい遊園地のみとは水着持参の当てが外れるではないか。
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 幸い園内では「進撃の巨人」展が開催されており、概ねストーリーを把握している子供達には好評だったものの、大掛かりなギミックはラストの模型のみで、ヘッドセットを被るVRも巨人に喰われる仮装体験を試みる様なグロさは皆無である。幾分時間を持て余し昼食がてらアウトレットにも見参してみたものの、ホテルにはコンベンション・センターさえも併設されているとはいえ、正直なのところ総合テーマパークとしてはリピーターを重ねるべく極め手に欠けよう。元より三連休故かオフィシャル温泉旅館の花水木には大枚を叩く羽目に陥ったし、確かに大陸からと見受けられる異国語も囀りビジット・ジャパンに貢献していようが、名古屋から直行すれば一時間も掛からないながら隔離された立地に則れば、かく新たな飛躍を求められる施設にこそIR法案は有効な手段なのかも知れない。
 漸く14時を迎えてチェックインすれば早速浴衣に身を浸して風呂三昧、恐らく人工であろう渓流に滝までも配された露天はなる程立派だが、些か真冬には駈け足にならざるを得まい。何故か公資だけは裸体を寒風に晒して悠然と足湯に浸かっており、祐旭の解説に依れば太っちょには気発熱による太っちょらしい寒さが襲い掛かる筈なのだが、脂肪に依る防御壁がそれを上回っているのだろうか。
h782.jpg  定番の卓球を経て、二間続きの立派な部屋に盛り付けられた夕食に預かる。和風の温泉を惜しみ無く賛美していた公資はここでも日本人は食糧自給率向上の為に米を食べるべしと主張し、かつ自ら率先して実践する国粋主義者の萌芽を発揮していて頼もしい。

 さて朝からの長き一日もこれにてと思いきや更に夜半のお出掛けが待っているのだから盛り沢山に他ならない。直線距離にして車で15分程度のなばなの里ナイトツアーである。
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 ところがSAPIXのテキストでも冒頭に登場しそうな三大河川の何れかだろう、川縁を迂回急行するものの幹線道路はうんともすんとも動かない。クリスマスイブにイルミネーションを拝むなどとうら若きカップルの如く似つかわしからぬ行為に及んだ報いか、22時も間も無くそのまま踵を返したくなったが、折角だからと人の流れに身を任せたところ、無数の小電球の群れはなる程手が込んでいて煌びやかである。
 しかも一面が黄色で覆われた隧道は光の国から僕らのためと言うよりはお別れの会擬きの「天国への回廊」たる表現が相応しく、三重県という立地柄関西文化の派手さに覆われているのだろうか。トンネルを抜ければメイン会場のテーマは「大地」、何故にここに北海道かと訝しむのは職業病であろう。
 流石に帰路は渋滞も掃け、隣接するホテル長島の内湯で身体を温め床に就いた。

12月22日(木) 年の瀬に龍は登る

h778.jpg  年末の恒例行事と言えばカレンダ配りだが、現体制になり二廻り目とあらば各人相応に馴染みの相手先も増え、集中日に一気呵成箱詰め持ち込んで事務的に配布するスタイルから、適宜訪問に則して顔見せ興業に準ずる方式に改められた。
 ただ必然的に永田町稼業の長い者が落ち穂拾いも兼ねることになるから、大きな袋を抱えて練り歩いていると憐憫の眼差しに捉えられるケースも少なくなく、だからと言って一箇所に腰を据えていては到底完遂は臨めないので、結局は独り廊下鳶とは寂寥感に溢れよう。
 ただ時には昨日の如くゆるゆると回遊しようかとの思惑が外れ、呼ばれたり説明したりと案件が増大した結果、参院から衆の第一・第二と絶妙の導線にてアポが並び、無聊を託つ暇がほぼ皆無だったのにはオーラスを前に我ながら自画自賛であった。
 今日に至り遂に終着駅が見えてきて余裕も生じ、幾許かはアクセントも欲しかろうと場所柄政治的にも著名な麹町の中華料理店にて昼食を挟む。何時も担々麺ばかりだったが麻婆豆腐も美味であった。
 財政難の折りか年々簡略化される予算折衝も概ね本日まで、永田町にも年末モードがやって来る。

12月17日(土) ロシアより遅延を込めて  -政治・経済 - 領土・領海・・経済水域-

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露西亜の作った街、大連
 今では露西亜と言えば即座に森元総理が浮かぶが、日露の雪解けには波があり、橋本総理とエリツィン大統領の川奈会談も大いに期待を集めたものである。更に紐解けば安倍晋太郎氏が公に姿を見せた最期の場がゴルバチョフ大統領来日であったことに鑑みれば、父の果たせなかった夢の少なくともスタートラインまでは地歩を進めた安倍総理には歴史の節目を引き寄せる運気の様なものを感じさせる。
 外交に首脳相互の縁が大きな役割を果たすとすれば、残念ながら両トップの何方が退場することにより頓挫してきたのがこれまでの歴史であった。しかしながら波の周期は着実に減衰しており、双方ともに長期安定政権が見込まれる今こそ、という期待を抱くのは強ち肯定的に過ぎる解釈とは言えないだろう。
h776.jpg  個人的にはよりによってこの日に、ローマ法王猊下すら待たせたと言われても慰めにもならない遅刻のおかげで日程大混乱のなか、混雑する都内を滑走してなお渦中の権力の館に全くの別件にて、異様に厳格なセキュリティ・チェックを経て闖入してたのは、妙に貴重な経験になったが。

 明けて本日は部のコンペ、実に二年半振りの出馬のため改めて設定されたハンデが甘く漏れ無く幹事が付いて来る優勝を危惧してのスタートだったが、全く調整の必要すら無いとは不甲斐なさの極みであろう。
 しかも寒気のなか16ホールの中途でクラブを求め坂道を駆け上がったのが運の尽き、左足の軽い肉離れに陥り残り二ホールはほぼ一本足打法を余儀無くされる。スエイしない分存外に真っ直ぐは飛んでいるものの、成る程王選手は偉かったなどと合点している余裕は皆無である。
 嘗てバブリーだったコースは中途半端に遠くて、移動を勘案すれば決してコストパフォーマンスに富むとは言い難かったし、哀しい打ち納めであった。

12月14日(水) 永田町抜け道マップ  -政治・経済 - 政治・経済・時事問題-

h774.jpg  パーティ・ラッシュの喧騒の中、オータニからルポールへの梯子にガーデンテラス紀尾井町を経由してみたものの、結局は永田町駅の階段を登る羽目に陥ったので、改めて本日抜け道を検証してみた。
 結論から言えば迷路の如く何層ものエスカレーターを乗り換えつつ辿り着いたが、忘却の彼方から記憶を紐解けば赤プリ時代も階段を駆け上がった末に旧館に闖入していたのだから、なる程赤坂見附から永田町への著しい急勾配が実感されよう。
h775.jpg  して本日はTKP永田町なる一棟借り上げの会議スペースに初見参したが、森タワーの脇から公道なのかタワーの付随物なのかエスカレーターを下ると建替途上の砂防会館の真裏に出るとは、ここでもまた傾斜地の文字通りの奥深さを思い知る朝であった。

 捩れ時代ならいざ知らず臨時国会の再延長に陥ったのは、元より会期初頭における政府・与党幹部の不規則発言に端緒を求め得るとしても、些か与野党ともに「日程」という国政の最大の要素への細心の配慮に欠けていたと言わざるを得まい。
 そもそもTPP審議において自然成立のひと月確保に執心した時点で参院が反発し、与野党相手を携えて対決法案のIRまでも粛々と採決して逆に衆院のお手並み拝見の構えを示したのは、美しく言えば参院の独自性の発揮には違いないところ、それが却って最大野党の衆参の足並みの乱れを際立たせる結果になったのは皮肉であったか。

12月11日(日) 報恩以徳  -スポーツ - プロ野球-

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重慶の人民大礼堂
(国民政府の建立ではないが)
 台湾野球と言えばライオンズの印象が強いのは、必ずしも西武グループの国際戦略に基づくものではなく、かのオリエント・エクスプレス郭泰源氏の存在故だろう。実際には往時「二郭一荘」と形容された様に西武ばかりに集中していた訳ではないが、中日・ロッテは寧ろ親会社の商売柄韓国との連関が強くなり、許銘傑氏や更には現役の郭俊麟を擁する西武も対台湾への架け橋を自認しているのか、昨年からは「台湾デー」も開催している。
 ただ台湾野球の歴史を紐解けば、嘉義農林の甲子園大会準優勝を描いた映画「Kano1931」にも呉昌征氏を敢えて一瞬登場させている様に、台湾島出身者の草分けたる氏が戦前に二度の首位打者を獲得した際に所属した読売巨人軍との縁が本来は最も深く、従って先月台中においてオール台湾対巨人OB戦が挙行されたのも伝統に基づく措置であったと言えよう。
 わざわざ昨日の放映を録画して繁々と眺めた第一感は、巨人のOB戦と言えばV9戦士がずらりと並ぶ姿が記憶にあるだけにOB会長の柴田監督を除けば80年代以降の顔触ればかりだったのには時の流れを思い知らされたが、篠塚・原・中畑各氏の藤田政権期のラインナップも懐旧の念ひと塩には違いない。
 一方、台湾サイドも先発は中日の救援投手・郭源治氏、三本塁打の鮮烈なデビューでオールスターの規約を変えて仕舞った呂明賜氏と豪奢だったが、亡くなった大豊氏は元より三宅宗源氏、荘勝雄氏らは日本に帰化したのでオール台湾には相応しくないとの解釈だったろうか。
 還暦内外の創成期メンバーよりひと世代下として締め括りに起用された阪神・郭李氏が打ち込まれ、急遽外野手が登板していたのはご愛嬌だったが、二刀流ブームの昨今だからこそこの場面には南海で投手と外野手双方を担った高英傑氏こそ相応しかったのではないか。先発捕手の李来発氏ともに来日し外国人枠に苛まれた先駆者の苦難の日々が改めて想起されて然るべきところ、少なくともTV放映には欠場した往年の名選手の今への言及が欲しいところだった。
 勿論、スタンドが最も湧いたのが郭泰源氏と王貞治氏の対決であったのは論を待たない。78歳の王氏がフルスイングして尻餅を付く絵柄自体が人智を超越しているが、まさに王氏自身が台湾の特殊な歴史を体現しているからでもある。
 母方の日本国籍にて出生した王氏は実父が中華人民共和国籍でありながら、戦後は西側諸国が正統政府として国交を持った中華民国籍を選択したことから、ルーツに鑑みれば縁の無い筈の台湾の英雄となっている。
 時恰もトランプ米新政権が「ひとつの中国」に波紋を投げつつある中、八百長問題により存在そのものを問われている台湾野球に手を差し伸べるのは、わが国スポーツ外交の観点からもひとつの試みではなかろうか。

12月10日(土) 風の歌を聴くな  -スポーツ - ゴルフ-

h771.jpg  五十の坂も手の届く時分となると、ひと度は押し並べて手を染めたとしても、恒常的にクラブを握る人口は絞られるものである。現にふた月程前、五年振りに成立した大学時代の友人とのラウンドもひと組が関の山で、だからこそ二世代下の面々が定期的にコンペを開催しているのは稀有な例であり、今般若洲におけるそれへの御相伴に預かったのは幸便であったろう。
 名前の通りのリンクスには違いないが、恒常的な強風に預かり猛烈なアゲインストが続けば折り返しは強烈な追い風、遥か9年前訪れた際にはお目に掛かれなかった爬虫類の如く異様な風体の東京ゲートブリッヂを拝みつつ、気温が上がったのが救いではあった。指定管理者制度に依っても結局は第三セクターが受託しており、見なし公務員扱いではなかろうものの腰の重いベテラン・キャディー氏揃いの運営は、小池知事の「東京大改革」の項目に挙げて戴きたくなる。
h772.jpg  敢えて風の影響を受け難い低い球を撃とうとした訳でも無いのだが、軽く振っての好発進に気をよくしていたら手打ちになったか右へ右へでロングのダブルパーとは泣けて来よう。それでも連続パーで回復して前半51とは、卒業から四半世紀近くを経て年次の相違も希薄になりつつあるとはいえ後輩諸兄姉に面目を保った形だったが、後半は奮わず除夜の鐘とは情けない。
 前半終了時に隠し四ホール換算で自己申告する変則オネスト・ジョンとは新たな展開だったが、蓋を開けてみるとゴルフ場サイドの算出は通常のダブルぺリアで行われ、敢えて手計算した変速オネストでは中位だったにも拘わらず、ご参考として最期に配布されたスコア表ではダブルパーが当たってハンデに恵まれ幻の優勝とは、曰く言い難い結果であった。
 余計な運気を費やしたと憂うべきかも知れないが、慌てて風呂から上がる必要も無く、キャディー氏への付け届けのタイミングに頭を悩まさず、何よりも来賓の構えで気兼ねなく参入退出出来るゴルフも偶にはよいものか。

12月8日(木) 砂の果実  -政治・経済 - 税金-

h770.jpg  そもそも消費増税までの過渡的な措置が主であり、早くから注目された扶養控除の所得税法改正には特定のバーゲニング・パワーを持つ集団が存在しないが為に、総じて今年の税調の攻防は静かな印象が強かった。
 この中で「第三」をターゲットとした酒税を除けば、今年も自動車は焦点のひとつであった。ただ顧みれば毎年の様に、些か斜に構えた表現を用いればお祭り騒ぎが繰り広げられるのは、勿論物品税時代からの個別課税の色合いを強く残す税制度だけに消費増税に伴う攻防が繰り広げられるのは理解出来ようとも、10%までに三年近くを余す本年において、その前哨戦とも言うべき官庁文学の世界を除けば、些か不可解であろう。
 その謎を解く鍵はリーマン・ショックにある。景気の著しい悪化に発足直後の解散総選挙を断念した麻生政権は、最終消費財の活性化をターゲットとした経済対策を編み出し、その中に自動車・電器への補助金・減税策が組み込まれたのである。
 そして異例の、国家による個人給付であった前者こそカンフル剤としての短い生涯を全うしたが、所謂エコカー減税は現在に至るまで命脈を保っている。元より自動車の保有に伴う税負担については既に21世紀を迎えた段階で環境負荷に伴う軽減措置が謀られていたが、取得時の減税策は美しく言えば個人消費の喚起、裏返せば企業に取って販売促進に直結するのだからその延命を願うのは必然だろう。
 現実には導入時こそ短期的な税収減を犠牲にしても景気回復を優先すべしとの文脈が、大不況のなか財政当局にもまた呉越同舟共有されていたものの、消費税上げが延期されたのだから現下もまたリーマン級の消費不振であると居直ってみても詮無く、少なくとも取得時は 「環境負荷軽減の為の代替促進」が大義名分である限り、新車の九割が対象という事実は製造側の開発努力如何に拘わらず、些か広範に過ぎるとの主張には対抗し難かろう。
 実際には景気への配慮のみならず激変緩和の観点からも中庸の決着に落ち着いたが、詰まるところ租税特別措置という禁断の果実に手を染め、その攻防に血道を上げる構造が固定化されたが為に、却って自動車諸税全体、更には産業の範疇を超えた税負担の配分たる大命題に辿り着かない構図になっている。
 産業としての担税力と経済対策、奢侈品としての資産たる自動車と生活の足となる公共物に近似する要素、更には環境に加え安全の視点が加味されるとするならば、消費税10%という大きな節目までに何等かの整理は果たして謀られるのだろうか。
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