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コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

3月13日(水) カネオクレタノム  -政治・経済 - 政治・経済・時事問題-

g111.jpg 20世紀の終わりに、今は亡き日経連会長付広報担当として春闘の歴史を学んだ記憶がある。そこには三井三池をピークに実力行使の対決路線から順法条件闘争へ、更には石油ショックの狂乱物価以降、理論武装した日経連の指針に基づき理論武装した経営サイドと、労使協調へと軟着陸を図る組合の構図が日経連の視点から描かれており、現下が百円玉幾つの世界から「働き方」に纏わる諸案件につき、労使相携えて同じテーブルに就く春闘の第三の転機との位置付けが為されていた。
 事実、往事既に相場のリード役のひとつであった鉄鋼は隔年春闘へと合理化されており、"闘う"の冠を戴いた日経連のレーゾン・デートルに新たな意味付けを与えるのは自身生き残り戦術の一環でもあったろうが、財界におけるもうひとつの所管たる社会保障においても命題が単なる企業負担の軽減から消費税を含む税制改革全般との連動が強まったことと相俟って財界総本山・経団連に吸収されたのは、春闘自体の変容をもまた如実に物語っていよう。
 現にリーマン・ショック以降の不況下においては定昇すらままならず、デフレに馴れ過ぎた労働組合員には最早ベアという業界用語すら死語になりかねない様相を呈していた。
 従って、今般の言わば「アベノミクス春闘」は久々に賃上げの「満額回答」が紙面に踊り、景気の回復気運が現実の回復基調に寄与していく過程における春闘の意義をもまた世に再認識させたという意味で、出身母体が青息吐息の連合にしてみれば、官邸に足を向けては寝られないのではなかろうか。
 冷静に考えれば、明白な金融緩和という大きな政策転換こそあれ、財政出動は緒に付いたばかり、成長戦略に至ってはこれまでに並んだメニューを著しく凌駕する、眼から鱗の施策が唐突に現れるとも思い難い。
 にも拘わらずメッセージと期待感だけでかく好感を示しているのは喜ばしくとも、本来は遅効指標であって然る個人所得は円安・株高による好況感が実需に裏打ちされ設備投資が進んで漸く反応するものであって、極めて好意的に解釈すれば経営サイドが既に前説のみでアベノミクスの本編を是認したと受け止めることも出来る。
 参院選前に有権者に直接届く効能が欲しかったのも紛れもない事実だろうが、だからこそ総理自ら異例の賃上げ要請に踏み切ったのだろう。

 勿論、それで現実に景気浮揚に弾みが付くならば、前例に倣わぬのは寧ろアベノミクスの革新性を示しているし、経済手法に幾分の国家社会主義的な匂いがあっても何等の痛痒を感じ得ない。
 お陰で大阪市阿倍野区ではお好み焼き店が大繁盛らしい。阿倍野ミックス、御粗末様でした。