コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

9月30日(日) 醤油と豚と  -育児 - パパ育児日記。-

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 主だった子供とお出掛けスポットをひと亘り浚い尽くした後は、子供の年齢上昇と相俟って昨今秘かなブームの工場見学モノに移行しようと試みてはいるが、総じて平日限定のため土日となると思い切りマイナー仕様の製造現場を訪ねることになりかねない。
 本日も醤油は醤油でもキッコーマンの野田にあらず、弓削多醤油のその名も醤遊(しょうゆう)王国とはマニアックだが、二階のガラス貼りの樽見学場兼レストランに上がると、充満する醤油の強い香りに本来父同様の濃厚派の公資がダウンし、一方薄味の筈の祐旭は涼しい顔で冷や奴を平らげ、早速衣装を羽織って絞り体験に勤しんでいる。
f855.jpg  しかし改めて10時からの見学コースでは一階の仕込み過程を解説付きで見物し、大豆やら塩やら原料のサンプル品に手を出しつつ短い時間ながら為になったのではないか。漸く匂いに慣れて来た公資も団子を頬張り満悦であった。
f856.jpg  次いで行き掛けの駄賃とばかりに曼珠沙華=彼岸花咲く巾着田公園は満開のピークで混雑極まりなく足早に退散すると、毎度のパターンで風呂を目指したが、到着してみると養豚加工のサイボクハムの一角と言うよりは辺り一体が市場と飲食街に加え広大な遊具施設を擁する穴場スポットとはツキに恵まれたと言えよう。
f857.jpg  二匹の豚とともにひっそりと佇む銅像の容貌が竹下元総理を彷彿とさせ、或いはふるさと創世事業の賜物かと邪推したら創業者御夫妻とは意外な幕開けで、本社屋の豚肉加工現場こそ衛生上の問題で覗けなかったが、パークゴルフでは祐旭が珍しく左打ちのクラブにあり付き、矢張りこちらの方がしっくり来る模様で公資に一日の長を見せ付けていた。
 牧場の豚と対面した後には公資も豚肉の美味に目覚めたし、二人して「5つ星」のまきばの湯を一丁前に誉め讃え、埼玉県日高市の食文化を満喫する一日、まだまだ探せば意外な掘り出し物に巡り会えるかもと意を強くする父だった。
 魅惑の工場見学情報あらば是非御一報願いたい。

9月29日(土) 二位の栄光  -育児 - パパ育児日記。-

f850.jpg  毎年幼稚園との掛け持ちで父は朝から小学校で単身シートを拡げて居住地の確保に努めてきたが、三年目にして漸く分離され、かつその席取り自体禁止されたため本年の祐旭の運動会は優雅な出立となった。
 考えてみれば徒競走ならゴール前、踊りなら実演場所近辺にカメラ毎移動させるし、皆お目当ては自分の子供だけだから順次ベスト・ポジションを交替すれば済むことで敢えて前列固定に固執する必要はなく、外縁部がシートで埋め尽くされていない分移動もし易く却って合理的だったろう。
f851.jpg  流石に全面解放となる昼食時にもトラックの内側に居を据えて、辺りを睥睨する豪気な家族は見当たらなかったが。
 特筆すべきは祐旭の奮闘振りで、駆けっこでは端の5レーンでスタートが前位置になるための錯覚かと見くびっていたら見事二位とは、本人曰く生涯初と満悦であった。棒引きも二度に亘り一人で複数の相手陣営に対峙して、終わって望遠で眺めていると一本差の負けについて友人と評論家口調で語っていたのはご愛嬌だったが、体格の良さが成績に現れてきたと言えようか。

f858.jpg  全校での馬橋音頭と三年の阿波踊りも日頃の鍛錬の成果を惜しみ無く発揮しており、撮影に夢中で自身強調していた「やっとさ~」の掛け声こそ聞き取れなかったが、事前の打ち合わせが功を奏し、陣取りを間違えて演技中に三脚を抱えて疾走を余儀無くされることもなく好首尾だった。
f852.jpg  付き添いとして間近まで及びながら校長氏の背中に遮られシャッターを切れなかった公資の短距離走は、高学年に引率されながら他の園児と並ぶと当人が引率者の如く貫禄で、来年は愈々兄弟揃っての晴れ舞台となれば、10月とは思えぬ陽気の中、蚊に刺されて閉口しながらの、些か持て余し気味だった待機時間も解消されよう。
 祐旭の在籍した白組が逆転勝利したのは日中情勢に鑑みても時節柄幸便だったろう。来週は三年振り来訪の幼稚園の運動会になる。

9月28日(金) これより三役  -政治・経済 - 自民党-

f849.jpg  棟梁に就いた者の最初の試練は人事である。その際、身内で固めるか、バランスと全員野球を重んずるかは悩ましい選択であり、嘗ての自由民主党においても主流、反主流の選別が明確だったが、40日構想を経て"和"の鈴木内閣以降は総主流派体制が定着した感がある。
 ただ竹下元総理ばりの「手柄は人に」の精神を持ち合わせたとしても総裁選という大きな戦いの、しかも三着予想からの大逆転に報いるにはポスト配分が解り易い論功に違いないとはいえ、総理時代に"お友達"人事の経験不足を盛んに喧伝されただけに今般の自民党役員人事には一抹の懸念は残ろう。
 勿論、高村副総裁は日中関係打開に向けたサインでもあろうし、町村陣営の選対責任者だった細田氏の起用や、決戦投票で安倍支持の額賀派からの登用が取り沙汰されるなど配慮の跡は伺えたし、「近いうち」に政府ポストを充て得ることも織り込みだろうが、ならば従来とは違う形で影の内閣を作り、文字通り"閣僚"として処遇しても良かったとの感はある。
 それでも賽は投げられた。安倍・石破連合軍には右寄りの香りは確かに否めないものの、その分社会民主主義に近似した従来の自由民主党とは異なる清新さが感じられ、知遇の高い面子で固めた機動力を活かして外野の声を吹き飛ばして欲しい。
 なお加藤総裁特別補佐も合わせ山陽・参院に偏り過ぎとの指摘は些か為にする議論だが、三役の議員会館の部屋が見事に隣合わせなのは、嘗て経産副大臣に西野・松の両"あきら"が並んだ際も囁かれた様に、もしかしたら一寸した遊び心も働いたのかも知れない。実際には役員は党本部在住が主になるから会館が並んでも利便性は増しそうにないが、期せずしての三役揃い踏み、第二議員会館五階の奥に伺う際は四股を踏んでからにしたい。

9月27日(木) 蜜月と冷却と  -政治・経済 - 尖閣諸島問題-

f847.jpg  嘗てまだわが国と共産中国との国交が無かった時分の、民間に名を借りた高崎達之助―廖承志の所謂LT貿易のパイプを、国交正常化後に引き継いだのが日中経済協会の沿革であり、毎年9月前半に協会会長を団長に訪中団を派遣している。
 経団連会長の宛職となる協会名誉会長も最高顧問として参画するため、16年前には記者対応として随行し、北京での要人会見やら主要行事をこなした後には内陸遠征の御相伴に預かったのも最早懐かしい。濃厚な蘭州ラーメンが美味で朝食にも登場し、経団連の某氏と街中に繰り出したらラーメンを頼んだ積もりが焼きそばが出て来たのも良い想い出だが、発掘と言うよりは兵隊さんの"建造"が続く兵馬俑を視察出来たのは得難い経験だったろう。
 今年は日中国交回復かつ協会40周年ということもあり大デリゲートが予定されていたが、折からの日中情勢で北京のみ小人数に絞った挙句、最後は日中七団体合同の要人会見にスケールダウンされ、かつ当日になり空域規制で飛行機が遅れ協会長も訪中断念とは、空港で楽団の演奏に迎えられた嘗ての光景が嘘の様であり、現下の環境に鑑みた仕打ちと勘繰られても到仕方無い。
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5年前には明代の万里の長城にも
 ただ七団体の顔触れを見ると、田川誠一氏とともに古くから親中派の代表格で「河野談話」の河野前議長を筆頭に元社会党の江田氏、革新系文化人とも言うべき堤氏とバリバリの現役とは言い難い顔触れが多く、外務省以来のチャイナ・スクールたる加藤紘一氏も失礼ながらお年を召された感が強かったのは、日中間のバイプ自体が細っている現実を体現している様にも見えた。
 宣戦布告に及んでも可笑しくない領海侵犯が続く中、政府は当然有事に向けた備えを怠ってはいなかろうが、「共産政府を相手にせず」と勇ましい言質に及びたくなる心持ちを抑えて外交交渉を続けなければならない現実の中、与党側の音沙汰が全く無い光景は些かうら淋しいものがある。
 民間企業としては市場たる13億国民の存在は無視し難いものの、少なくとも人件費の安価な輸出基地たる位置付けを見直すべく政治リスクの再考が急務となろう。

9月26日(水) 美しいカムバック  -政治・経済 - 自民党-

f846.jpg 如何な珠玉の政策であっても衆寡の耳目を集めなければ無価値に等しいから政治にはドラマツルギーが必要である。
 その文脈に則れば福田元総理も橋本元総理も果たし得なかった総裁への復辟を、嘗て類を見ない番狂わせを以て成し遂げた安倍新総裁の物語は、第一回総裁選で二・三位連合に敗れた祖父のリターンマッチとしても美しいものだった。
 確かに党員票に秀でた石破氏のトップは早くから予想されていたが、決戦に残る二位争いは石原氏有利と言うより寧ろ、安倍氏は健康回復をアピールするための顔見せ出馬で、最終的には石破陣営に合流するとの見方すらあった。それが覆ったのは対中韓情勢が"タカ派"の安倍、石破両氏に追い風となったのも間違いなかろうが、一方で谷垣前総裁を不出馬に追い込んだ形となったこと、勇み足的な発言等石原氏自身の失策の要素も少なくない。何よりも党重鎮の石原氏支持を長老支配の象徴の如く喧伝されたのは痛手だったろう。
 総理や党の要職を歴任した大ベテランが長く実力者のポジションに留まるのはなる程望ましくはなかろうが、それは寧ろ本来先頭に立つべき派閥領袖クラスの伸び悩みの裏返しであり、「重鎮」の識見、抱擁力が現に秀でている構造的課題の帰結とも言えよう。
 ただその「重鎮」を背景に擁するが故余計に、かつ実父とのバランスからも気色鮮明な安倍、石破両氏に対し石原氏は温和な中道路線を歩まざるを得ず、益々悪循環に陥っていったのではないか。
 嫌が応でもこれで世代交代は進むだろう。しかしながらドラマは劇的でも、11年前の小泉劇場の幕開けと大きく異なるのは党員票という名の民意と結果の相違である。結局それが、体調不安と三年前の下野に繋がった07年参院選の大敗と、93年宮澤内閣不信任案への白票を高く掲げての賛成の何方がより党内へ斎した傷跡が大きかったかの差異に由来したとするならば、安倍氏もまた中庸の選択であり、真に驚くべき決着ではなかったと受け止めるべきなのだろうか。
 それでも出来レースに過ぎなかった民主党のそれと比べる迄も無く、経済政策に花を添えた林芳正氏という役者揃えの妙と相俟って、ガチンコの戦いが自民党本部に久々の活気を取り戻す大演目となったのが、わが国にとって大いなる幸いに繋がらんことを強く祈念したい。

9月23日(日) ドライバー・シングル  -スポーツ - ゴルフ-

f844.jpg 干からびて仕舞いそうなかんかん照りで左手首だけ白いゴルフ焼けが出来上がるのと、降りしきる雨を掻き分け飛ばされない様に一打毎に恐々傘を置くラウンド、私は寧ろ前者はへっちゃらだが正直後者は勘弁願いたい。
 確かに道すがらのグリーンも水溜まりと化しかねない豪雨に比べれば幾分小振りにはなったが、雨中の強行は辛い一日だったろう。ただ事実として10組程度はスタートを切っていた様だから、寧ろ安易にキャンセルに及ぶのは次回の日程が視野に入っている優雅さの証しであり、数少ないチャンスを活かす為には天候をものともしないのがゴルファー心理なのかも知れない。
 それでも残暑の折り意外な迄に蒸し寒さを感じなかったのは幸いで、しかも前回課題として残されたドライバーが矢鱈と好調かつ距離も伸びているとは、雨ニモマケズの甲斐もあろうものである。よく出来たもので替わりにアプローチやパットの距離感が今ひとつ、お馴染みのドッグレッグ&池を大きめのクラブでクリアした前半インは50と平凡である。
 見せ場は後半のショートで180yを綺麗にワンオンと前回に次ぐ3Wの活躍だったが、続く4番で生命線のドライバーを引っ掛けOB。打ち直してど真ん中と好調は維持し、残り3ホールで百切りの可能性は残したが至らず、ドライバー・シングルなる有難いのか有難くないのか微妙な異名を頂戴した。シングル・ドライバーよりは響きが良さそうなのは不幸中の幸い、この好調が維持出来るならば何も不平は無いのだが。

 旧知の元政党職員の御仁が話題の新政党に奉職されたとの報に接する。あのまま党に留まっていればどうなっていたのか。かの郵政選挙は多くの人の人生を変えた。

9月22日(土) カウチカレー  -映画 - 映画レビュー-

f845.jpg  子供達がスポーツクラブ主催の遠征に赴いたのを受け、昼は妻と二人薄味の祐旭には耐えられないインドカレーを経て、DVD鑑賞に費やす。
 「ニクソン」の如く政治評伝を期待した「サッチャー」は、妻として母としての氏にスポットを当てており、「鉄の女」振りの象徴たるフォークランド紛争も今ひとつわが国においては馴染みが薄く、小泉構造改革のモチーフともなった徹底した市場化とその帰結として雇用には寄与したが英国資本の駆逐化されたウィンブルドン現象の功罪、或いはサッチャー保守政権が長期化した反動としてのブレア「第三の道」労働党政権を経、今や二大政党制のそのものにも疑問符が投げ掛けられている後代政治への影響といった興味深い視点への言及が乏しく、半ば眠りそうだった。
f843.jpg  確かに存命中の人物を描くには各方面への配慮により穏当に留まらざるを得ないのかも知れないが、ハリウッドにおけるサッチャーがレーガノミックス・サッチャリズム時代の強いアメリカへの憧憬に起因するならば、その高揚感を満たすものではなかったろう。
 「サッチャーはね、マーガレットって言うんだ本当はね」ということか。

 一方、邦題「スーパーチューズデー 正義を売った日」は選挙人獲得に向けたキャンペーン戦術と広報官とその上官とのポスト争いが絡み合う大統領選の舞台裏だが、恐らくは自ら大統領に扮し政治劇を演じてみたいというGクルーニー氏の趣味が高じて成立した映画と忖度されよう。
 ただかのザ・ホワイトハウスに対比するまでもなく笑いの要素に欠け、政治とは後ろ暗いものという固定イメージを助長しかねないという意味で、氏の政治への高い関心が却って災いした感がある。
 政治モノ二本になったのは期せずしてではなく私の嗜好に他ならないが、期せずして政治ドラマは難しいとの定説を裏付ける内容だった。

9月21日(金) 闘魂超えて  -スポーツ - プロ野球-

f840.jpg  84年オールスターの江川の8連続奪三振88年阪急最終試合となったダブルヘッダーの西宮球場、後の小泉総理とともにフレームに収まった98年日本シリーズ第一戦が私にとっての三大野球観戦であったが、本日の読売巨人軍の優勝はそれに次ぐものとなったろう。
 確かに杉内、ホールトン、村田と圧倒的な戦力補強で優勝して当然と言えばそれ迄だが、三冠王を目指す打つべき主砲が打ち、ディレイド・スクイズといった仲々お目に掛かれない小技あり、エースが打たれても山口、西村が立て直し、次期幹部たる長野が決勝打とはまさに今年の巨人軍を象徴する試合だった。
 第二次長嶋政権との違いは、藤村や松本、或いは更に次代を担う太田、中井といった打者も、田原や笠原、小山にこの日も新人連続試合無失点記録を更新した高木京ら勝負と若手の育成を同居させていることで、ぶっちぎりの優勝を以てスキャンダルを水面下に追いやった原監督も胸を撫で下ろしたことだろう。
f841.jpg  何よりもこの日の観戦が決まった時点から照準を合わせるが如くにマジック1に至り、かつ対象球団の中日もしっかり勝って先にキスウが見えて仕舞うことも無かったのは、一歩間違えれば麦酒掛け明けの文字通り気の抜けた消化試合だったのだから、日頃の接待三昧の賜物と有り難く恩恵を受け止めておきたい。

 今週はダブルヘッダーあり、遂に七週連続愛知巡業となった名古屋での宴席あり、重鎮との重い宴席ありとハードで起伏に富んだ一週間だったが、良い締め括りだった。

9月19日(水) 幕は降りない  -政治・経済 - 選挙-

f839.jpg  わざわざ新幹線を費やしてまでパーティーに駆け付けるのは一見非生産的に映ろうが、日頃永田町ではお目に掛かり難い捲土重来を、或いは新たなる出馬を目指す「地元」の方々を一網打尽に出来るという意味で、職能柄から考えれば意義がある。
 ただ昨日も述べた様に純粋な後援者か、参加者の大多数と挨拶を交わす程に顔が広いか、翌日の朝食を抜いても良い程に食べ漁るかの何れかでも無い限り、長居することの無いパーティーに最後まで滞在してみると、乾杯までのお馴染みの光景に続いて立派な出し物が挟まった後に挨拶第二部が訪れる。
 前段はたとえ内心長口上に辟易としても聴衆は一様に神妙に立ちすくんでいるが、こちらはバイキングを貪り得手勝手に談笑し続ける人々の耳を自らに向けさせなければならない辛い登壇者である。
 宴の後の様な現実を垣間見るのもためになる。

f842.jpg  政権交替が対応を遅らせた分、却って手厚い手当てを擁し、政府の日航対自民の全日空が如き構図となったのは、空という国際規制が必要な領域かつ国内の二社寡占の構造からしてやむを得ない側面もあろうが、余り美しい構図では無かった。
 勿論、早期の再上場は国民負担を少しでも軽減するためには必要だったろうが、だからと言って身綺麗になった日航が安売り攻勢を掛けている絵柄は、まさにGovernmental Motorsとなった米自動車会社同様に波及の甚大さに鑑みれば経済合理性には叶っていたとしても、感情的に納得出来ない。
 経営破綻を経た山一證券や毎日新聞が再建後は大手の一画の地位こそ守りながらもその最後尾に位置した様に、暗に分を弁えるべく求める美意識が、少なくともわが国にはあり続けて欲しい。

9月18日(祝) 黒衣を脱いで  -政治・経済 - 選挙-

f838.jpg 嘗て戦後間もなくから60年代に掛けて、政界進出の登竜門は官僚、秘書、新聞記者とされていたが、今や後二者は寧ろ退き、二世と地方議員に取って替わられた感がある。それは「地盤」の継承をスムースにする「看板」の意義の変化を示してもいようが、諸外国では政治はおろか官民問わず次たるポジションへのステップアップの過程たる色が濃い政治家秘書職が、長期雇用慣行のわが国において「職業秘書」として確立された所産でもあろう。
 それでも今もなお長年苦楽をともにしたボスから議席を引き継ぐ行為は「秘書」の究極の有り様であり、例えば地元出身でなかったり、必ずしも円満な移行とは言えなかったとしても、ひとつの憧憬に値する姿に違いない。
 今日昼はかねてより懇意にして来た元秘書にして現支部長の御仁の励ます会だった。政治資金規正法8条2項に規定された政治資金パーティーを俗に総称して「励ます会」と呼ぶが、勿論主役を物心両面で励ますのが本旨とはいえ、永田町周辺居住者稼業を続けていると、往々にして盃を傾けながら来賓諸兄の口上が過ぎ去るのを待ち、漸くの本人挨拶を経て乾杯で退散という流れ作業に陥りがちである。
 然るに本日は企業の肩書きを戴いた出席者というよりは、寧ろ心情的には主催者側に近く、文字通り来るべき勝利に向け候補者を励ましたいという想いが強かった。だからこそ急遽設営された、派閥横断の同僚たる秘書陣による候補者夫妻を囲む打ち上げの会にもお声掛け戴いたのは、ダブルヘッダーとなって体力的には過重かつ本来の相方には失礼極まりなかったが、有り難く前祝いの御相伴に預かった。
 誰しもが為し遂げられる夢ではないし、それだけに御家族の労苦も忍ばれ、金銭的にも先の見えない心理的抑圧も想像を絶するものであったろう。その苦悩を微塵も感じさせない氏のバイタリティーが前途揚々の、そして多くの秘書諸兄にとってめ希望の星となる未来を拓かれんことを切に願いたい。
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