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コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

2月14日(火) 偉大なる実験台  -趣味・実用 - 趣味と日記-

f518.jpg 米長元名人がコンピュータに敗北という記事をが紙面を賑やしていたが、既に人間を完全に凌駕したチェスに対し、取得した駒を再利用出来る将棋は変化幅が大きく、人に一日の長があるとされた、その一日が命運を閉ずる日が何れ訪れるのも自明の理であったろう。
 しかし何よりも驚いたのは、その報道を耳にしたのがつい最近だったにも拘わらず、早々に書店に並んだ当該戦記の存在であった。
 勿論、蓄積をベースとした読み筋に無いであろう初手を用いて撹乱し、詰めに至る終盤の速さ、正解さでは到底叶わないコンピュータに序盤で圧倒的な優勢を築くべく、通例の人間同士の対戦とは全く異なった戦術を用いて、中盤までは米長氏の必勝形だったという解説そのものも非常に興味深い。
 ただ対戦に至る経緯を時間軸で追う構成を見る限り、既に対局の始まる前に本書の概よそは推敲されており、後は自観戦記を誂えれば話題性覚めやらぬ内の出版が可能という冷徹な読みが伺える。
 そればかりか現に敗北したがゆえ更に、現役を退いたとはいえ名人経験のある第一級の棋士がコンピュータ対局に臨んだリスクテイクに大いなる賞賛が寄せられた結末に鑑みれば、或いは広告塔たる会長職の使命が意図的か無意識かを問わず敢えて失着を選択させ、ドラマツルギーを斎し得たとのではないかとも深読みしたくなる。
 兎角毀誉褒貶はあろうが、嘗ての故・芹沢八段とは違った形で棋界の知名度向上に執心する米長氏に敬意を表したい。

 祐旭は本命から、人気者の公資は同僚数名から、チョコレートを確保した模様である。
 何方がより望ましいかは判らないが、何方も父には羨ましい。