コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

7月6日(金) 球は世に連れ  -スポーツ - プロ野球-

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 期せずして週に二度の野球観戦、水曜は先発・田口が乱打され、代打・阿部のタイムリーで一点差に追い付くものの、九回に沢村が走者一掃を許してジ・エンドと、典型的な負けパターンだった。
 一方、本日は彼我に別れた田中兄弟の競演に新奇性こそあれ、菅野対大瀬良のエース対決投手戦を坂本の一振りで決める、何方も今年の巨人を象徴する様な二試合であったか。
 元より二千本目前の村田を解雇した様に、敢えて若手に切り替えるべく意図は明瞭とはいえ、愈々岡本の当たりも止まり、激走を見せた吉川や小林がスタメンから消えているのも一重に打力故であろう。
 先週はこの上更に坂本が欠場し、スワ故障かと騒がれながら何事も無かったかの如くスタメンに復帰していたが、今から思えば事件が発覚しての御沙汰待ちで自粛を余儀無くされ、結果的に関与が軽微として放免扱いで翌日から復帰との経緯があったものと推察される。
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 勿論、すっぽんぽんの動画を投稿するのは余り奨められた行為とは言い難かろうが、果たして年俸の二割を召し上げられた上に閉幕まで謹慎を余儀無くされるとは、単なる猥褻サイトに留まらず反社会的勢力でも関与していたかと邪推して仕舞う。
 考えてみれば過去には高額の賭博は元より、自動車の死傷事故や同僚選手に成りすました無免許運転等を経てなお選手生命自体は全うしたケースも少なくなく、逆算すれば刑事罰に至らなければ水面下で処理されていたということだろう。
 かの黒い霧事件でさえ、刑事罰にも処されたオートレース組やノミ行為を除けば、スケープゴートの如くに重罰が課された一部球団選手以外は、球団を移ることでクーリングオフの解釈が為され、引退後は球界に残らないという暗黙の合意で穏便に措置された様に見受けられる。
 更に言えば合宿の如く多人数の共同生活の場においては窃盗に依る経済的利得以上に行為そのものに快楽を覚える所謂"盗癖"の様なケースもあり、過去にも環境を変える為の移籍が図れた事例があったと聞く。今般は有名選手の備品をネットで売り捌いたとあれば当然に発覚し、処分も致し方無かろうが、議員の国会内における行動が院外では免責されるのと同一視するのは失礼だとしても、読売巨人軍の情報統制力が劣化したと言うよりは、グラウンドにおいては野球以外の責は問われないという牧歌的な時代は過ぎ去った、と解釈すべきなのだろう。

5月31日(木) ハムはお好き?  -スポーツ - プロ野球-

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 本年二度目の東京ドーム。見処はいきなり四審判がバックネット裏に疾走する不穏な絵柄に連続で遭遇した、初めてのリクエスト体験だったか。
 成る程、従来ならば監督に依る抗議の運びだったろうから、明らかに時間短縮の合理化には寄与しているに違いない。
 大相撲では「世紀の大誤審」を契機に70年代にはビデオ判定が導入されたが、端から行司には最終決定権が無く勝負審判に委ねられており、野球も幾ばくかこれに近付いたということか。尤も責任審判が審判部長だったとして、判定が覆っても立行司の如く進退伺いを提出する義務は無い。
 もうひとつは負け試合模様だと上原投手に巡り会えるのではとの期待と不安が両方とも見事に的中し、代り端本塁打を浴びてそのまま敗戦とは、今年の巨人を象徴する様な展開だったか。
i397.jpg  清宮選手も二軍落ちして仕舞ったし、詰まるところ最大の収穫がお土産の戦前の縦書きではなく、高校野球を模した漢字横書きの「巨人」ユニフォームでは、交流戦になると毎年パ優位があからさまになるが、愈々高橋監督の進退が危うくなりそうで、不安極まりない。

 昨晩は会社のボウリング。人手不足からの二年連続だった選手を外れ、パーティー・ラッシュを切り上げ後半戦から観戦する。
 しかし出陣すればしたで面倒だが、一方で観てるだけでも退屈である。この種の催しは立ち位置が難しい。

5月18日(金) 野球の花は  -スポーツ - プロ野球-

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 連続イニング無失点を早々に打ち破る筒香選手の流し打ちと言うより左翼への引っ張り、全く力が入らず回転だけで軌道に乗せた様な坂本選手の飛距離、挙げ句はプロ1号は遅過ぎた感こそあれ菅野投手の豪快なと本塁打合戦の上に、代打・阿部選手のタイムリーで追加点を挙げた読売巨人軍が快勝する、本年初観戦は魅せ場だらけの好ゲームであった。

 肩書きというものは総じてインフレ傾向になる。例えば自由民主党幹事長が所謂総幹分離が定着した時分に替わりに総裁派閥用に幹事長代理が設けられたが、今や代理が二人でその上に代行、並び大名の副幹事長にも筆頭が二人いる。これらはライン上のポストだが、官邸機能強化が唱えられた際に、総理の手足として配置された補佐官は業務秘書的なポジションで使い勝手が良いのだろう、例えば総裁補佐、幹事長補佐といった形で増殖している。
 球界においては退任した名監督を処遇するアドバイザーなるポストか乱発された時期があったが、オーナー、球団社長、代表といった職制には預からない自由な立場で、実態として何処まで経営に関与しているかは定かでなかった。木田元投手のGM補佐も、得意な漫画を活用しての広告塔かと思いきや、清宮選手を引き当てたりとこちらは人事機能の一翼も担っているべく見受けられる。
 さてイチロー氏の新しい役職はSpecial Assistant to the Chairmanであり会長付特別補佐と訳されている。自由民主党の総裁特別補佐は筆頭副幹の宛て職になりつつあるが、一般的には"特別"が付加されると非常設のニュアンスが出るとともに、常勤色が薄れる。しかも会長"付"がもうひとつの味噌であって、to theを正確に反映したとも言えようが、会長の職責を補佐執行するにあらず、出入り自由仕事はご随意にの実態を解釈したのだろう。
 それでも松井秀樹氏のGM付アドバイザーの如く純然たる名誉職なら卯も角、来年の日本における公式戦では客寄せ宜しくの含意だとすれば、幾ら美しく形作ってもよく受けたものである。
 イチロー氏と言えばイタコの如くに本人に成り変わってメディアに発言を開陳することを生業とする文筆業の方々が想起されるが、取り巻きに人を得ていないのだろうか。或いは疑念を打ち破る復活劇が周到に用意されているのだろうか。

2月22日(木) 米粒に写経  -スポーツ - プロ野球-

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(上)2001年ソウル/(中)2014年デトロイト
の青木選手/(下)同年シンシナティ
 今年もプロ野球選手名鑑の季節がやって来た。例年通り週刊ベースボールに始まり、スポニチ、廣済堂カラー名鑑と読破して野球評論家業の基礎知識を仕入れる通過儀礼だが、取り分けフロント各位からスカウト、打撃投手・打撃捕手まで、ユニフォームを脱いだ元選手の今が伺えるスポニチ版が、経年変化を追う為にも資料として重宝する。
 ただ今年になって痛烈に感じたのは、各球団とも背広組が充実してきたにも拘わらず、トップ頁の下部というスペース自体は変わらず、しかも妙に長い肩書きも増殖しているので著しく文字が小さくなり、愈々目を凝らしても判別が困難になってきたという哀しい事実である。
 ポケット版なのでシーズンに入って、三塁・一塁のベースコーチ確認作業にも手元で利便性が高いのだが、拡大サイズか虫眼鏡のオマケ付きでも需要は存在するのでは無かろうか。

 今年も移籍は低調だったが、海の向こうではイチロー氏の再就職先が決まらず、青木選手は都落ち帰国、本邦においても村田選手の浪人など、日米ともども好景気の割には峠を超えた高給取りには渋チンで春が遠い。
 FAの方はそれなりに売り買いの場が立ったが、看過出来ないのは大野捕手の人的補償に指命された岩瀬投手が移籍を拒否した「事件」であろう。
 勿論、不惑を越えてなお故障から復活を遂げた岩瀬投手を称賛するには吝かではないが、幾ら"リジェンド"であっても超法規的な協約破りが許容されるのであればプロテクトという制度設計のみならず、FAそのもの根幹を揺らがせかねない。
 更に不可解なのはマスコミの反応で、東京スポーツ以外は報道を敢えて自粛したのは岩瀬投手に配慮した"忖度"かも知れないが、元より落ち度は岩瀬投手ではなくプロテクトから外しても指命はしまいと高を括った中日球団にあり、結果として金銭に落ち着いた日ハム側の大人の対応に委ねるのではなく、一旦岩瀬投手を移籍させた上で他の選手との交換を以て取り戻すという段取りを踏まなければ、却って岩瀬投手の我が儘として名声に傷を付けて仕舞ったのてはないか。
 猛省どころでは済まされない失態と声を大にして訴えたい。

11月15日(水) トレードオフになったから  -スポーツ - プロ野球-

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在りし日の川崎、西宮の両球場
 今年もプロ野球12球団合同トライアウトが開催されたが、村田内野手や松井稼外野手といった大物や、既に転職先からお声掛かりのある選手はそもそも顔を見せないので、中では知名度のある大隣投手に注目が集まり、難病からの回復途上というストーリー性からも早くも東山紀之氏のナレーションが聞こえてきそうである。ただ実際にトライアウトを経て採用される選手は年々減り続け、既に一昨年から一回のみに簡略化されるなど、儀式化を危惧する声は尽きない。
 本来なら野球評論家 専門分野:トレード・移籍を僭称する身の上としては、ここからのオフの時期が稼ぎ時の筈なのだが、故・山中最高顧問曰く「年末は皆風邪を引く、ゼイゼイ」の喧騒と重なりのここ数年は滞り気味であった。
 と言うのは些か公式見解で、実際のところは政治、野球、音楽、都市変遷の四大評論家業の中で、歌謡曲に疎くなり比重の下がっていた音楽が、シティ/シンセポップを摘まみ食いする様になって復辟し、入れ替わるが如くに野球への情熱が磨耗していた証しであろう。相変わらず古の週刊ベースボールや名鑑本は買い漁っているのだから、より正確に言えばFAと自由契約後の移籍ばかりになってトレードの星勘定を論評出来なくなった現下の職業野球への関心が薄れていたと評するべきだろうか。
 褌を絞め直して週刊ベースボールの記事から丹念に拾った過去のベースコーチ情報も追加し、久々にトレード大全を更新してみたものの、今ひとつ筆が進まない。元よりそれは外野の勝手な言い分に過ぎず、当事者にとっては実力と待遇が相反せず、予見性高く生き易い世界になった証しなのだろうが、籤引きに戻って再び偶発性豊かになったドラフトとも大分と差が付いた感がある。

 先月が長時間労働だった為、健康診断を強要されたものの、月300時間を超えたらシステム上危険水域の赤字表示とは高度成長期の猛烈サラリーマンには鼻で笑われよう。
 しかも太っちょとしての経過観察で先週も身長体重を計測したにも拘わらず、又しても同じ手順からとは、健康増進法に基づく措置とはいえ民間とは思い難いお役所仕事ではあるまいか。
 産業医の形式的な問診にてストレスはと問われ、この検診こそが最大のストレスですと応えたかったが、向こうも機械的なお仕事なので大人になって呑み込みました。

10月4日(水) 売られてゆくよ  -スポーツ - プロ野球-

i95.jpg  高校野球ですら複数の投手を抱えるのが当たり前の時代だから、四番・ピッチャーが初代ミスター・タイガース藤村富美男以来66年振りであって不思議ではない。打者としては一安打も完封勝利を果たすとは矢張り大谷投手兼外野手は只者ではない。 ただ実質的なわが国への惜別記念として消化試合の興業的要素が色濃かったのは、怪我で日本における最終年を半ば棒に振ったことと相俟って一抹の寂寥は禁じ得まい。
 そもそもポスティング制度の過渡期において、わざわざマイナー契約しか出来ない25歳以下の段階で、少額の売却益にも拘わらず放出するとは黙示か正式な密約かはさておき、入団時から何等かの合意があったとしか類推出来ないが、日ハム球団としてはこの五年間で相当な利潤を挙げたであろうから経営判断としては合理的と言える。
 ただ投手としてのローテーションとその間の指名打者としての出場を須く大谷選手の出場を優先してラインナップするという特異な起用法は米国では望むべくはなく、幸いにしてDHの無いナ・リーグに身請けされたとして、猛烈に打撃に秀でた投手として扱われよう。
 現に大リーグではわが国では既に江川卓氏を最後に絶滅種となした年間数発の本塁打を放つ投手も現存しており、それはそれで大谷選手に通算本塁打数を超えられた際に「自分は投手としての36本」(他に代打で2本)と自負していた様に得難い存在には違いないものの、代名詞となった「二刀流」とは異なろう。
 金銭的な利得以上に、より過酷でハードルの高い最高峰に挑戦したいという運動家の心理は理解出来る。しかしながら野茂氏やイチロー選手といった先駆的な稀有な例外を除けば、海を渡った選手の大半が確実にわが国に残した足跡に比して小さな実績に終始しており、猫も杓子も米国を目指すのが合理的な道筋であるとは到底思えない。
 元より国粋主義者であるべしと薦める積もりは無いが、如何な大谷選手と謂えども常人には到達し得ない記録を積み上げる為には、本邦職業野球を全うしようという怜悧な計算は働かないものだろうか。
 欧州や南米も含め彼我の差が甚大過ぎる他協議ならばいざ知らず、少なくとも世界第二位の地位は揺るぎない職業野球においてなお、恰も米大リーグへの出奔を称揚するが如くマスメディアの姿勢は、興業としての経済効果の大きさに鑑みるまでも無く、わが国経済に決して正の効用を与えまい。今更「二番じゃ駄目」と宣ってみても、正力松太郎翁の「米国に追い付け、追い越せ」という謳い文句に、こと職業野球の世界にて具現性があると信ずる牧歌的な輩は居まい。
 勿論、米大リーグで投手として相応の成績を挙げ、なおかつ代打で登場する大谷選手の姿は、日本国民にとって愉しみな想像には違いない。にも拘わらずなお、プロ入りを表明した清宮選手が王貞治先輩の868本を狙う意気やよしと称賛するならば、本邦に腰を据えて戴きたいと願わざるを得ない。

9月18日(祝) 月は隅田の屋形船  -スポーツ - プロ野球-

i73.jpg  評論家を僭称するには程遠いものの、所謂「五社協定」であるとか映画会社の盛衰に詳しくなったのは、嘗て映画産業華やかりし時分、その多くが職業野球の経営に携わっていたからに他ならない。取り分け今は亡き大映は"ラッパ"と称された永田雅一氏が河野一郎氏の盟友、既に死語に近い「政商」として所謂光淋の間事件はじめ度々政局に登場しており、政治・野球の二大評論分野の何れもにも大きく関わることから、長らく関心を抱いてきた。
 学生時代には友人と、打撃を極める余り常人の辿り着き得ない世界に到達し世捨て人の如くあった、大映の後進たる東京オリオンズの榎本喜八元選手宅に近寄り、庭に誂えられたバッティング用と思われる網を道すがら眺めた記憶もあるが、後に沈黙を破って氏自身が雑誌「Number」に登場され、その鳥籠を使っての自宅練習の有り様を語るのみならず、引退後も球界復帰を目指し、東京球場までランニングを続けていたという半ば神話化していたエピソードが事実であったことが明かされている。
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 その東京球場は大映の倒産後、小佐野賢治氏の手に渡りとここでも政治が見え隠れするが、72年には僅か10年の短い生涯を終え、跡地は東京都の所管する荒川総合スポーツセンターとなっている。久方振りに訪れたが、軟式野球グラウンドこそあれ往時の縁を思い起こさせる物は無い。榎本氏は解体の過程をわが身を切られるが如くと表現していたが、左中間右中間の構造がほぼ直線で本塁打量産スタジアムと揶揄はされていたものの、南千住駅から徒歩圏内たる好立地にかく舞台が今も健在なれば、と早過ぎた先駆者の叡智が偲ばる。

 今更の様に思い立って探訪に足を伸ばしたのは、古い週刊ベースボールを漁っていて遂にわが高円寺に嘗て存在したロッテ・オリオンズ合宿所の住所を突き止めたことに触発されたが故である。
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こちらは公物
 学校法人と寺院に囲まれた地域に区の集会所と覚しき施設が存在するが、既にそのものズバリの地番は住居表示から消えており、隣接するマンションが合宿所時分とは玄関口の位置を違えたのではないかと類推される。
 元より経営が傾いた大映に今で言うネーミングライツの形でロッテ製菓との業務提携の道を拓いたのは岸信介元首相とされるが、71年には正式にロッテが球団を買い取り、東京球場の閉鎖で仙台を仮フランチャイズとしつつ、所謂ジプシー・ロッテとして彷徨い、漸く川崎に安住の地を得た頃に活用されていたものだから、そもそも永田オリオンズとの直接の結び付きは無かろう。
 現在の浦和に至る前、既に二軍は青梅を本拠地としていたのだとしても決して近隣とは言い難く、或いは飛鳥田市長の肝煎りで改築新造された横浜球場への同居の可能性が残されていた時分に、双方の中間にプロットしたのだろうか。
 謎は深まるが、俄かに騒がしくなる中で忙中閑ありのノスタルジアであった。

8月29日(火) あなた育てます  -スポーツ - 広島東洋カープ-

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 確かに球場効果による安定収入の拡大は大きく寄与していようが、広島カープにとって所謂逆指名制度が廃止されたのは追い風になったろう。折しも元スカウト部長・宮本洋二郎氏の評伝が発表されたが、かの木庭教氏を筆頭に人材発掘に長く携わる、著名なスカウトを数多く排出してきたのがストレートに強味に直結しよう。
 取り分け木庭氏やヤクルトの片岡宏雄氏、或いは遡って太平洋の球団代表まで昇り詰めた青木一三氏、阪神の佐川和行氏ら、端から専属乃至は選手としての期間は乏しい、嘗ての"名物スカウト"の面々が、時には恫喝も辞さず権謀術数の限りを尽くすタイプであったのに対し、宮川孝雄、渡辺秀武、宮本洋二郎、苑田聡彦といった長年の選手生活を経てなおスカウト職を全うしたカープ歴代の顔触れは、寧ろ村夫子然とした地道な佇まいを醸し出しているという意味で、逆に近代的である。
 実際、本日も鈴木外野手を故障で欠いてなお、好投のマイコラス投手を伏兵、西川内野手のひと振りで逆転勝ちとは、幹部候補生以外は年齢を重ねれば流動資産へと昇華させる経営戦略故より顕著に映るとはいえ、若手の台頭が際立っていることは否定し得ないだろう。元より二年連続優勝を為し遂げた時、80年代後半以降の長期低落期の様に、地元の熱を覚まさない為には新たな戦術が必要とされるのかも知れないが。

i8.jpg  新進党初の代表選は1000円を払えば誰でも一票を投ずることが出来る、勿論有権者層自体の恣意性には多分に疑義を残すとしても、民進党の現行サポーター制より遥かに、政党の代表という公職でないポストの決定過程を、お祭り騒ぎ化して宣材に活用するという点で斬新であったろう。
 面白がって友人と二人して二人の候補者各々に投ずるという、勝敗に全く影響の無い関与を施して見事にその戦術に乗せられた記憶があるが、結果は小沢一郎氏が大勝したのは周知の事実であろう。敗れた羽田孜氏はやがて小沢氏と袂を別ち、流浪を経て新民主党の初代幹事長には就任したものの、"早過ぎた元総理のその後"を過ごすこととなった。
 歴史にifを想定しても詮無いが、もし細川退陣後、後継に儀せられた渡辺美知雄氏が多数離党者を引き連れて非自民陣営に参画し、羽田カードを温存出来ていれば、或いは少数内閣として内閣不信任案を迎えた際に、敢えて中選挙区制下のままでも強引に解散に踏み切っていれば、異なった未来が生じていたのかも知れない。美しく言えば、羽田氏はミスター政治改革の異名とともに、小選挙区制と政権交替という政治改革に殉じたということになろうか。
 政権交代の首班指名において既に病篤い羽田氏を小沢氏が肩を抱えてともに壇上に登った姿は、ひとつの時代の証しとなるシーンであったろう。御冥福をお祈りしたい。

8月8日(火) 職業としての野球  -スポーツ - プロ野球-

i18.jpg  八月の時の鐘を告げると言えば大袈裟に過ぎようが、週刊ベースボールの夏の名鑑が定番になったのは2008年よりトレードの期限が七月末に改められてからである。
 二軍で宝の持ち腐れになるよりは、クルーズ選手の如く故障者の相次いだ楽天に新天地を与える配慮は、かの近鉄ブライアント選手がデービス選手の強制送還に伴う中日二軍からの補充だった過去例を顧みる迄も無く、選手個人にとっても望ましかろうが、目を疑ったのは日ハム・谷元投手の中日への金銭譲渡では無かったか。
 元より期限を超えてなおの移籍が不可能な訳ではなく、現に6月末期限時代の2003年7月にギャラード投手が中日から横浜に移籍しているが、自由契約後のウェーバーになる為、同一リーグ内の下位球団に優先権が与えられる形になる。米国ではこの制度を流用し、下位球団の事実上の権利放棄によりポスト・シーズン目当ての移籍も横行しているが、わが国では日本シリーズへの出場登録は8月末時点での支配下選手としてこの便法にも縛りを掛けているのは、優勝を諦めた球団による選手の売り喰いを防ぐ趣旨に他ならない。
 それでも米国ではダルビッシュ投手のドジャース入りの様に、下位球団による経費節約の趣旨での二軍選手との交換は、まさに七月末の風物詩と化しているが、ついにその波がわが国にも訪れたと言えようか。しかも嘗ての広島以上に年俸の高騰した選手をほぼ自動的にFAにて排出する日ハム商法が最早市民権を得たと見え、存外に大きな批判を浴びていないとは、わが国球界も資本主義の原理に馴染んだものである。
 しかし年末にFAで売却するより確実に金銭譲渡を選択した日ハムの経営判断には一定の合理性が認められたとしても、不可解なのは今季はクライマックス出場もほぼ絶望的な中日側で、FA残留を織り込める密約でも無ければ不可解極まりなかろう。
 ところで夏の名鑑は昨年までは異動者のみの掲載だったが、今年からは全員改めて並べられることになった。それはそれで前半戦の活躍度合いを反映するという意味ではひとつの考えだが、今度は巨人では一軍投手コーチに二軍監督まで配転になったコーチの異動への言及が消滅したのは画竜点睛を欠こう。先乗りスコアラーになった田畑コーチは存在自体が抹消されているのだ。尤もシーズン末に休養する監督など頻出するから、完全版を求めるのは無い物ねだりには違いないのだが。

i29.jpg  嘗て元軍人氏と訪ねる二百三高地があったが、今日は元プロ選手氏と観戦する巨人ー阪神戦という贅沢なひと時を過ごす。
 二宮清純氏が講演で、広島が四半世紀の低迷から脱却出来たのは放映権ビジネスから球場ビジネスへの脱皮にあると指摘していたが、確かに長年横浜市に球場の上がりを吸い上げられてきた横浜が、ブラフであっても新潟への移転を仄めかして大幅に契約条件を改善させた様に、職業野球もまた音楽同様に箱物とそれに付随するグッズ収益が鍵を握るに至ったのは事実だろう。 ただそれだけでは何故に巨人と阪神が弱くなったのかの説明にはならない。試合は日ハムからやって来た石川外野手の本塁打、適時打で巨人が快勝し、交換相手の太田外野手も漸く大砲が開花しつつあるのだから好トレードの見本ではあったが、敗戦処理に登板した、恰も余生を過ごすかの如く藤川投手の存在が、実に球場を取り巻く気だるさにマッチしていた。

6月14日(水) 朝まで生国会  -スポーツ - プロ野球-

h938.jpg  大幅延長から小幅と揺れた通常国会は、未明の不信任採決から明け方の参院本会議テロ法成立を経て、急転直下の会期中閉会に回帰した。
 元より延長したところで所詮"強行"による決着を余儀無くされるのであれば都議選への影響を最小限に留めたいとの思惑故たろうし、参院側が竹下元総理以来の野党に配慮した、経世型の丁寧な運営を行ってきたからこそ、最終局面での強引な決着が可能になったとの逆説的な帰着でもあろう。
 ただ本来は議員内閣制でありながら、大統領制下において党議拘束とは無縁である筈の委員会中心主義が米国主導にて移入されたが為に、数の論理に基づく粛々たる採決が恰も与党の横暴の如くに喧伝される曲解が、"和"を重んずるわが国国民性と相俟って跋扈した帰結であるとするならば、委員会採決を合法的に割愛した今般決着は些か示唆的でもあった。
 野党側も不毛な議論であることは承知でなお攻め倦ねているのだろうが、儀式の如く採算の無い不信任案に委ねる替わりに、本当にテロ法に賛同しないなら、議席の少ない無力を詫びて粛々と反対票を投じ、次期総選挙において数という力を与えて欲しいとオーソドックスに訴えれば、却って新鮮に映るのではなかろうか。

h937.jpg  継投無安打無得点とは完投投手が絶滅危惧種と化した極めて現代的な記録だが、それが反転攻勢の契機となるかは、そもそも打てない打線が連敗の主因であるから判然としない。
 戦後間も無くには近鉄・芥田、大洋・森といった指導者が球団経営に転じた例は散見され、その最たるは三原脩日ハム社長だったが、残念ながら西武・ダイエー両球団の実質的な創業者たる根本陸夫氏を除いては成功を治めたとは言い難い。
 ゼネラル・マネジャーたる職責も、副会長兼務の王氏は別格として中村勝広氏、高田繁氏といった監督出身GMは存在感に欠け、寧ろ米国型のビジネスマン上がりの方がスポーツ紙を賑わす場面は少なくとも定着していよう。
 何と無く本邦初のGMと喧伝された廣岡達郎氏によるバレンタイン監督解任による軋轢が、GMたる役職そのものへの懐疑を斎したままの感がある。皮肉にも今般の唐突なGM交替は高橋監督の身代りに他ならず、必然的に鹿取大明神に人事権は備わっていないのだとすれば、些か中途半端だとしても、純粋にプロアマ問わず選手の編制のみ総括するわが国らしいユニフォームから背広への新しい着替え方を示唆することになるのかも知れない。
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