コラム堀内一三

~粥川善洋の四方山コラム~

5月1日(月) 中乗りさんは何処  -地域情報 - 名古屋・愛知-

h900.jpg  名古屋に在住したのは小学六年からなので祖父母に連れられた下呂温泉を除けば、愛知近隣の観光地は殆ど訪れたことが無い。従って年末の長島然り、今般犬山も新鮮である。
h901.jpg  昨夜に引き続きてんこ盛りの朝食にはカレーきしめんも戴き、一路犬山城へと登城する。城フリークではないので見聞に乏しいが、思いの他狭く感じたのは大阪やら名古屋やらを見慣れた為で、江戸以前から残る国宝の天守閣はこうした規模が当然なのかも知れない。
 最上部の外回廊の周回は小学生期に訪れたピサの斜塔ほどの恐怖感は無かったが、ケアンズのアスレチックを彷彿とさせ、安全規準に煩いわが国らしからぬ仕掛けだったか。


 実は犬山には昨年も一瞬闖入し明治村は賞味済みなので、続くターゲットはモンキーパークと相成った。開場前に到着し、係員氏の「昔は県道まで車が溢れて臨時の職員が交通整理に出向いたものだが」との遠くを見詰める様な述懐にも触れたが、確かに平日の旅とはいえ黄金週間とは思い難いひっそりかん、1962年開業の最寄り駅からの足となっていたモノレールも既に駅舎跡のみの巨大なオブジェと化している。
h902.jpg  しかも俄かに雨足が及び、ずぶ濡れの中に臭気著しい猿と戯れるのは、何故か動物好きの子供達に存外に悪評はないものの、父にとっては苦痛極まり無い。ただ旭山動物園の成功以来、動物を本来の生態のままに来場者と触れ合わせる常套手段はここにも波及しており、連れ立ち雨宿りするワオキツネ猿を一網打尽に撮影出来たのだから何が幸いするかは分かるまい。
h903.jpg  元より猿とその仲間達だけでは幾ら世界各国から集っていても早々に飽きが来て、昼前には切り上げてかの一見さんお断りで名高い名門・蓬来軒の暖簾分けたるひつまぶしの店に急行、父は当然蒲焼き御飯だが、妻子には好評で大枚叩いて消費拡大に貢献したのである。


 犬山探訪はまだ尽きないとは流石に名古屋五摂家・名鉄グループの築いた一大観光地だけあるが、何と無く東武ワールドスクエアの亜流を想像していたら、いきなり猿人・原人・新人の進化の過程を見せられ、成る程モンキーの延長線上かと妙に納得したのがリトルワールドである。
h905.jpg 屋外には諸外国の建物が移築されているという点では寧ろ明治村の同巧異曲なのだが、ペルーやインドの代表的な家屋を並べられても兼高かおる気分には到底及び難く、海外旅行が高嶺の花だった時分の万国博を想起させるものの、今となっては些か子供騙しの域を超えていない。
h904.jpg これだけでは撮影スポットにも乏しいので、気の進まない公資をすっぱいチュウで釣ってアフリカ人に扮してみたが、お着替えおひとり様300円は確かにお手頃とはいえ、もっと思い切りマイナーな新興国家を追加するなりひと捻り欲しいところではあった。
 戦国の世から猿の軍団を経て世界まで、駆け足の時間旅行でした。

4月30日(日) 摩天楼ブルース  -地域情報 - 名古屋・愛知-

h895.jpg  さて明けてこの日はスーツに着替えて豊田市へと向かう。雑魚寝した父母の家から地下鉄に万博のレガシィたる新交通システム・リニモ、更には旧国鉄予定線改メ第三セクター路線と、公共交通機関不毛の地において果たして自動車を用いない移動が如何に大仕事かを実証してみたが、流石に早過ぎて二時間近く前に到着して仕舞った。
 して目的地の豊田スタジアムまでてくてく歩き始めたところ、背後に街宣の音がスピーカーから奏でられる。黄金週間にも拘わらず大義なことと聞き流そうかと思いきや、響き亘る声には聞き覚えがあるではないか。
 実に本日会合の主宰者の御仁がいきなり駅頭に現れたとあらば足を留める他は無いが、幾ら眼を凝らしても辺りに人はいない。やむを得ずそのまま俄か聴衆と化したが、都市部なら定番の駅頭演説もかく宛も無い労苦のひと駒に過ぎないのかと、自動車社会における政治活動の難しさに期せずして直面したのであった。
h897.jpg  ただ程無く旧知の秘書氏も現れ、スタジアムまで事務所車に便乗し、かつ車寄せからの導線確認まで同行して見事随員の本分を果たし得たのだから、行き掛けの駄賃には終わらず早行きはまさに三文の得であったろう。
 お目当ての豊田スタジアムでは華やかにガーデニング・フェスタが挙行されているが、元より園芸振興対策議連の寄り合いにもあらず、上官の会食のアテンダントに他ならない。それでもグラウンド・レベルから天然芝にも触れ、貴賓室から見下ろす眺望と古の大阪球場もかくあらん天外魔境の絶壁擬きの客席も賞味するプチ視察にあり付いたのだから、半日強の休日出勤も役得だったか。迷路の如くスタジアムの内部もまた都市変遷評論家・野球評論家には興味深いものだった。二年後の闘球W杯会場としては、駅までの微妙な距離感が大量の搬送において若干ながら懸念はされるものの。

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 病院にとって返して一家と合流しここからは再び黄金週間モード、犬山市へと向かった。
 敢えて名鉄の牙城にも拘わらず木曽川を超えた対岸の岐阜県側に宿を定めたのは「家族風呂」に牽かれたからであったが、その予約を巡りひと悶着あったのは温泉街としての凋落振りを体現するホスピタリティーの減退故だったのかも知れない。
 ただそれを除けば山の幸のみならず中部地方らしいと言うべきか味噌料理に海老フライと夕食も盛り沢山だったし、谷間の休前日外とはいえ合理的なお値段設定だったろう。温泉宿らしい卓球台こそ存在しなかったものの、カラオケにも興じ、夜半の露天風呂から遠く眺めるライトアップされた犬山城も乙なものだったのではないか。

4月29日(祝) 湯~とぴあ宣言  -地域情報 - 名古屋・愛知-

h891.jpg  父母の入院加療を受け黄金週間は名古屋の父母の家に業者を招聘してゴミの廃棄に始まる。それだけでは余りに味気無いので見舞いを経て向かうは名古屋城、一同失念していたが三年振りの再訪であった。生憎の豪雨も程無く晴れ上がり、三選間もない市長肝煎りの木造天守閣再建に先立ち復元された本丸御殿にも闖入するが、いざ鉄筋の天守閣に再入城して祐旭の記憶を甦らせたのが石引きの再現ギミックとは、戦後の構造物の見世物的な要素もすっかり歴史の域に至っていることを実感させる。
h892.jpg  ただほぼ行き当たりばったりのこの日の行程で次いで及んだのがスーパー銭湯とは意外な展開だったろう。そもそも風呂嫌いではなくとも取り分け露天を好まない妻との嗜好は必ずしも一致しないところ、わざわざラバーまで張り替え新装したラケット持参の執念が卓球場を発見させ、前日千住まで遠征した後に全日空ホテルで一時間立ち尽くし、棒になった足が久方振りにマッサージを求める父の思惑が合致したのである。
 荻窪にも同じネーミングの風呂が存在するが、勿論同系列ではなくトマス・モアの理想郷を「湯」に準えるのは全国津々浦々考えることは同じという証しだろうか。
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 周辺環境は必ずしも芳しくはなさそうだが中は文字通り極楽で、公資は早速「大願成就の湯」に身を浸して「まだ志望校も決まってないけど」と呟きながら、先の組替え試験では二場所振りに大関からの陥落が決まったわが身を奮い立たせていた。
 浴衣と作務衣の中間の様な装束に身を包み、夕食の後は卓球の予約まで寝転んで漫画三昧とは黄金週間に相応しい怠惰なひと時である。翻って久々に見学した母子三者のピンポンは流石に鍛練の賜物、一打一打に見事回転が掛かってトップすることなく立派にラリーの応酬が繰り広げられているではないか。今更の参画は到底叶わない父は一路揉まれ部屋に急行したのである。急拵えの割りには盛り沢山の初日だったか。

1月1日(祝) 明けましたぬるま湯  -地域情報 - 新潟県-

 明けましておめでとうございます。

h795.jpg  幾分雨模様の元旦はスキーから父のフィールドに変転するも、遠乗りは避け湯沢から関越道では次のインターに当たる石打塩沢地区とは原点回帰であろうか。
 鈴木牧之なる人物は寡聞にして知らないが、その名を冠した牧之通りは古の三国街道の塩沢宿を模した街並みが再構築された造りで成る程風流には違いない。元旦から開業は望むべくもなく甘味ひとつ有り付けなかったのも致し方なかろうが。
h796.jpg  気を取り直し風呂へと向かう。元よりリゾートマンションには大震災以来湯源が閉ざされたとはいえタンク運搬で温泉は完備されているが、湯沢界隈の立ち寄り湯はまだ児童園児時代の子供達とひと亘り浸かり尽くしたので、目指すは丸山の温泉宿とはマニアックである。
 ただ規模からすれば到底長島とは比べるべくも無いものの、露店の岩風呂が小振りながら程良いぬるま湯で、雪景色を眺めつつ長湯してものぼせるでも無く快適であった。
 まだまだ湯沢は奥が深い。

 皇室典範には、帝国憲法下から皇太子、皇太孫の規定はあっても皇太弟の記述はない。だからと言って皇位継承権第一位の宮様の皇太子「待遇」には他の選択肢はあり得ず、そこに特定の意思を見出だすのは論理的には為にする議論であろう。
 内親王殿下の即位を可能とする皇室典範の改正の是非を問う前に次たる天皇陛下を確定するが如き呼称は杓子定規に過ぎるとの形式論は、解釈の余地を与えず杓子定規にするのが皇室典範の最大の眼目であり、だからこそ今般は陛下のご意思との折り合いを付ける為に特措法という苦肉の策に導かれている、という国家の判断に整合しない。
 ただそもそも皇室典範の想定していない退位が論ぜられる事態こそ極めて杓子定規の範を超えているのではないかとの疑念があるからこそ、根源的に何か釈然としない感が残るのだろう。要は我々は天皇機関説ではなく人間としての陛下を自然に受容しているという帰結か。

12月31日(土) 山へきたのさ ヤー  -音楽 - J−POP-

h792.jpg  賀状地獄から抜け出し30日15時にわが家をセコムに委ねるも結局18時前の、越後湯沢止まり「たにがわ」のグリーンにしかあり付けないとは些か上越新幹線を甘く見過ぎたか。或いはカレンダ配置から年末年始の短い連休故に移動も集中したのだろうか。辿り着いた雪の湯沢は父にとって二年振りである。
 とはいえスキーは四年前を以て自主的に卒業しているので、明けてリフト一回券で岩原の中腹まで登り、妻子を見送りゲレンデのカフェテラスならぬスノウマンに陣取ってファミリー仕様のポテトボックスを独り平らげる。持続されない集中力が自動的に補われるべくウルトラと音楽と交互に読書を挟んだお陰で、単調な賀状のコメント添えも珍しく捗り、年内投函の目処が見えてきた大晦日だった。
h793.jpg  プロ野球と映画界、政治と都市変遷など評論稼業の分野相互の結び付きから知識を敷衍していくのは私の常套手段だが、ウインタースポーツとの御縁はあるまいと高を括っていたら、マン30話「まぼろしの雪山」のロケ地が今は亡き程近くのTBS丸山スキー場との記述を発見する。ここ岩原にもスノボーも盛んな大衆ファミリー向けスキー場として命脈を保ってはいるものの、加山雄三氏のゲレンデとともに若者文化の最前線を担った栄光の時代があったのだ。

 昨夜は到着して温泉で身体を温めレコード大賞、本日は紅白と例年通りの展開だが、些か作業疲労か身体の節々に痛みを覚え、年越しの数時間前にダウンした。
h794.jpg  ただ事後の録画鑑賞を含め本年の歌謡新曲を初めて通聴して、ABCDに留まらぬ程に複雑化した曲構成の一方にラップをはじめ旋律の平板化という振幅を経て、単純なコード進行とメロディに回帰した結果、ヒット曲の大半がフォークの如くに響く皮肉に気付く。
 そもそも"レコード"大賞がYouTube再生回数を指標に用いている時点で自家撞着だが、強引に纏めればオーケストラでも第九でも如何様にアレンジ出来るピコ太郎もまた、確かに舞台映えするという意味では稀少に違いないが、楽曲としては単純化の極みと言えよう。
 旋律の美しさよりも唄い易さ、躍り易さに歌声喫茶的な均一性が優先されるのも、対価が著しく希薄になった音楽の経済的価値の低下に一因を求め得るならば、恰も縮小均衡の一環の如くあるのは少々寂しい。
 芸能は見目のみならず歌謡そのものもゴージャスであって欲しい。

12月25日(日) 四人でいて楽しけりゃ  -地域情報 - 東海地域情報(愛知・岐阜・静岡・三重)-

h785.jpg  食に煩いと言えば美しいが、偏食揃いのわが家にはバイキングこそ相応しく、オーソドックスな日本食は宝の持ち腐れである。ただ長島を選択した際には全く意識しなかったが、三重県と言えば桑名の蛤であり現に昨夜も立派な蛤が食卓に並び朝の味噌汁も蜆の嵐だった上に、更に有り難いことには朝市宜しくロビーには売店が溢れ試食の宝庫なのである。しかも大小様々な佃煮が並び貝フリークにはやめられない止まらない、念のためひと袋は夜食として賞味したことは銘記しておくが、この朝市からゲームセンターに繋がる導線には薄っすらと見覚えがあるではないか。
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 三ホテルが長大な回廊で結ばれた温泉街にありがちな構造ではあるが、既に紐解くべき記憶は曖昧なところ確かに12年前に職責を以て訪れていることが確認されたのは、本コラムの記録性の為せる業に他ならない。
 長島PAに出現したヘリポートを恭しく拝謁しているとはドクターヘリすら珍奇であった時代が懐かしいが、既に道路族の端くれたり得ていた事実とともに「露天が五つ」との記載に鑑みれば、風呂もまた進化していることが伺われよう。
 朝方は男女入れ替わったその露天にて身を浄め、しかしながら行く先は再びなばなの里なのだから矢張り行楽地としては若干バリエーションを欠いているのは否めない。しかも昨日と打って替わり閑散としてイルミネーションが無ければ只の花の多い公園であり、ナバナだけにお花のホームラン王ですと呟いてみても面白くない。
 気を取り直して昨夜虚空に浮游していた未確認飛行物体を目指し練り歩くと、円盤上部に富士山が載ったアナクロな伸びる円形展望台が鎮座在している。花畑に場違い感夥しいのはスパーランドから移設したが故らしいが、上空からは遠大な長良川河口堰が一望されわが国河川行政の来し方が偲ばれようか。
 肥料よく色香よくのバラ園は冬眠中だったものの、異邦人ばかりのベゴニア園にてこちらもわが家らしからぬ花壇で命の洗濯と洒落混んで帰路に就いた。

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 クリスマスの朝をわが家の外で迎えたのは人の親になってからは恐らく初めてで、「今夜、私、ふぁーぜるくりすます」などと解り難い呆けに興じるまでもなく、必然的にサンタクロースなる人物は実在しないことが明らかにされてなお、子供達には暗黙の了解事項だった様である。
 夜は基督教と親和性が高いとも思えないが、高円寺では名高い沖縄料理の抱瓶に狙いを定めたのは味の濃いラフティーこそがわが子にヒットするだろうとの目論見通りであった。
 国内旅行は財布の紐が際限無く緩くなる法則を実感しつつわが家のお湯に浸り、 ケーキを囲んで三連休の幕を閉じる。

10月12日(水) コアラなき一泊延べ四日  -海外情報 - オーストラリア-

h711.jpg  国内線の細い通路は飲料を運ぶワゴンが稼働すると前後不通に陥るが、恰も単線における列車交換設備の如くに中央付近の一列のみ前席との間隔が広く、膀胱を破裂させる窮地には陥らない。ただこの席を預かれば足は伸ばせても不定期に他人の尻か陰部かが眼前を遮るので決してお奨め出来まい。
 しかしながら凡そ一日半振りのシドニー空港では往路と異なり積荷をピックアップする必要が無く、楽チンを謳歌していたのが運命の別れ道とはビクトリア女王でも気付くめえ。
 メルボルンでのチェックインの間際、割れ物故に大事を取ってとスーツケースから鞄に入れ換えたワインボトルが、見事に没収トである。メルボルンで指摘されれば急ぎ引き返して収納する算段も組めたかも知れないが、分量が少ないと自ら毒味をさせられる議員会館に倣って係員に一杯如何ですかと薦める余裕も毛頭生じ無い。やむを得ず免税店でワインを調達し直したが、昨年送付代が矢鱈と高く付いたトラウマの反作用であり、そもそもワインが好きでも無いのに手を出す半可通が首を絞めたと言えようか。
h713.jpg  何とかラウンジに辿り着いて気を取り直し、僅か二日も経過していない羽田のVIPルームは遥か彼方の記憶と一同想いを馳せて再び787の人となる。帰路は今となっては当たり籤の左側一列席を獲得したが、同じCA御一行様に巡り合い彼等の勤務サイクルと同一の弾丸ツアーであったことに深く感じ入った。 深夜便は睡眠が必定であるからこそビジネスの効能がより活かされるとは言え、残念ながら映画鑑賞は制約される。
 それでも行きにはスケールがでかい割りにオペレーションはミニマムという、前作を踏襲したハリウッドらしい「インディペンデンス・デイ」の続篇と、早くもラインナップに乗ったシンゴジラ再び。帰路は世代的にはヒットして然るべきだが本編に親しんでいないと愉しめない要素もあったろう「スタートレック」、更に「植物図鑑」は野菜嫌いには共鳴し難いテーマだった。寧ろ睡眠を削っても鑑賞したい作品に恵まれなかったのは、体力的には幸いだったかも知れない。

h712.jpg  ケアンズを訪れた際、余りの高物価に新興国にありがちな観光客対応の二重価格を疑ったがそれは杞憂であり、事実国を挙げての物価高はわが国ならば与野党問わず泣いて歓びそうな最低賃金千円と入れ子の関係になっている。だからこそ労働集約型の製造業を放棄した結果、豊富な資源輸出に依ってなお貿易収支は赤字基調である。
h714.jpg  にも拘わらずサービスが黒字なのは観光、就く少々の物価高には頓着しない小金持ち層の需要があり、それを裏打ちしているのが暮らし易さというイメージであろう。多数の産業人口は必要とせず、物理的に移民の到来も考え難く、それがまた適度にハイソなコンパクト・シティを維持せしめる。わが国経済には全く参考にならないが、恐らくは人が余るか人件費が嵩めばワークシェアの方向に向かう、貧富の差が少なくなりそうな構造は朧気に理解出来た。
 時差が無いのも善し悪しで、5時には通関も出て議員二氏は永田町へ、同行の士は札幌へと旅立つ中、一旦家に荷物を置いて出社する。わが国はまだまだモーレツである。

10月11日(火) 路面電車に乗って  -海外情報 - オーストラリア-

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(左上から)線路からクリケット・スタジアムを
臨む、旧国会議事堂、路面電車が一杯、
王立展示館
 開けて貴重な唯一の朝は当然散策に費やさなければならない。まだ明け切らぬ6時に出立し単身市内巡りである。
 1854年竣工のフリンダース・ストリート駅を基点に跨線橋から階下の大量の線路を見下ろせば、トンネルへと吸い込まれていく電車には見覚えがある。昨夜川越しに眺めたものと同一ならば、郊外では地上に現れる東西線スタイルの地下鉄なのだろうか。
 遠くに望むクリケット・スタジアムに大英帝国の縁を想い、かのケアンズでは気魂しかった横断歩道の誘導音も消え入るが如く控え目な奏でと気付く頃には、不遜にも一端の豪州通気取りである。
 路面電車の軌道に沿って歩けば、居住性に優れる替わりに芳しからぬ観光資源の中でも、職責柄外してはならない首都時代の国会議事堂は存外に小振りで些かの拍子抜けは否めない。撮影禁止の地下鉄への潜入は断念してそのままカールトン庭園から王立展示館の触りだけ臨むが、豪州最古の欧風建築・公園として世界遺産に登録されていると言われても、今ひとつ面白味には欠けよう。
 そこで元より鉄道マニアでは無いが、矢張り土地勘のあるフィールドに回帰して帰路は路面電車を活用してみた。市内外周はロハとは驚くべき公共性だが、丹念に路線番号を確認した割りには大きく右に舵を切って市街地に闖入したところで注意深く辺りを見渡す。新婚旅行のプラハで偽検札官から法外な罰金を課された記憶が遮るが、今更支払うことも能ずもし煙管だったら御詫びしておきたい。
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 教会も多く旧い街並みの残る美しい街には如何にも映える路面電車も、かく頻繁かつ縦横無尽に辺り一面を埋め尽くしていると有り難みも薄れるとは贅沢な物言いだが、休前日夜の幹線は30秒間隔とは常軌を逸した数珠繋ぎで、その技術こそ高度交通システムの名に相応しかろう。坂の街だからこそ地域の足としての価値があるのは、何処と無くサンフランシスコを想起させるではないか。
 全地球規模での住み易い街ナンバーワンに選ばれるのも道理のまさにコンパクト・シティ、スマートシティを実証するにもどんぴしゃりだが今年も肝心の実験を体感するには時間が無いし、街中での実証は土台無理である。そもそも自動車産業の消滅する国家において、トラムの生き残り得る交通流の街には自動運転の必要性も薄かろう。
 概ねひと時半、古都を満喫して企業人に戻る。

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愉しそうだがこういうものには寄らない
 タクシーではぐれ刑事のハプニングこそあれ再び海辺のコンベンション、本日は展示開場へと歩を進め、お馴染みの日本ブースの開幕テープカット・セレモニーに臨む。賑やかしの一味として周囲に陣取り、処々に官民見覚えのある顔触れが二列縦退で白手袋に鋏の仰々しい構えを拝む。
 午前中一杯は出展した本邦官公民全てのブースを巡視で練り歩くが、残念ながら体験ものが少なく押し並べてパネルなので、恰も朝から晩まで面接官に従事していると同一人物が現れたかと錯覚する様な、内容の重複も多々見受けられよう、流石にバッチのある方々は忍耐強く傾聴力に長けておられると感服した。尤も与野党相乗り三議員のうち二氏が理系であり従来とは若干の様相を異にしたのか、各ブースの説明員も張り切ったか、なお時間が押して慌ただしく会場を後にする。
h707.jpg  そしてオーラスに至り短かった今般行程唯一の余暇、 昨年に続く、メルボルン市内を跨ぎ南極海へと注ぐヤラ川の名を冠した豪州有数のワイナリー、ヤラ・バレーである。生憎の曇天もここに至って晴れ間が覗き、小一時間の郊外への旅路で辺りは一面の草原、漸く亜大陸らしき光景にあり付いたかと一同感嘆したものの、冷静に眺めれば富良野の如く美映の如くであり、これが本物の豪州の絵柄なのかは定かでない。
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 羊が一匹、羊が二匹とフェアウェイかと見紛う牧草地帯を目にすればラムを賞味したくなるのも人の道、急ぎワインを流し込みバレー最古のイェリング本体に向かえば、買い物の隙すらない強行軍の我々を見越した様に、土産にはお誂え向きの小ボトルが並んでいるではないか。しかも菓子折りに加えここでも英連邦らしくワイナリーには幾分不似合いな紅茶すら數種類に亘っており、早々に調達完了とは頼もしい。
 空港までの道程を二台分乗とした賜物、ショコラティエ・ショップにも寄り道し、蒸気機関車も走るという森林を潜り抜けて大団円に至ったのだった。落とし穴が待ち受けていたのは空港に到着してからになる。

10月10日(祝) メルボちゃんの持ってる  -海外情報 - オーストラリア-

h692.jpg  夜半、羽田空港のVIPルームで議員を待ち受けるいきなりの展開に、ラウンジで幾許か腹を満たして搭乗をの思惑も、人っ子ひとりいない広大な空間を前に急ぎうどんを注文して平らげる、人形の家と形容しては天に唾するも不自由かつ緊張の旅立ちとなった。
 ここに至る過程は決して平坦では無く、そもそも日豪財界人会議に蹴球W杯予選が重なり航空便もホテルも満杯な上に、恒例行事にも拘わらず参加者が文字通り二転三転し、最終決着に至ったのは先週と、渡航すら危ぶまれる綱渡りの道程であった。
h693.jpg 想えば年に二度も豪州に赴くのも意外の限りだが、今般はビジネスとはいえ又もやの深夜便は効率的には違いないものの好き嫌いは分かれよう。加えて昨年と同じ787にも拘わらず、中間二席の外れ番と思いきや前方を見渡してなお位置をずらしての等しく二席ばかりとは、どうやら左右に空間の拡がるかの王様シートは廃絶されたらしい。確かに格差があり過ぎて却って不満を喚んだろうし確実に客席は増えるが、プチ運試し感が消滅したのは少し残念である。
 ケアンズにチャーター便があってもメルボルンに直行が無いのには驚いたが、日本酒とコーラの取り合わせに映画を眺めて無事床に就くと目覚めて程無くシドニーに降り立つ。流石に異国では通常のラウンジで安堵したが、わざわざ機中拉麺を控えたにも拘わらず朝方のため食物に乏しいとは読み違えに他ならない。外壁の広大な窓の掃除が進むに連れアバウトにスピードアップしていく様を眺めつつ、再び機上の人となった。何故か窓際の席が与えられたが国内線はエコノミーでも左二席は空いており、上空から広大な亜大陸を俯瞰出来たのは幸便だったのかも知れない。

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 暖気に溢れたシドニーからひと時半、豪州の初代首都メルボルンは中心部に至っていきなり海辺に高層ビル街が現れるが、市街地は大英帝国由来の美しい街並みに縦横無尽に路面電車の架線が張り巡らされる、都市フリークには垂涎の光景である。
 その分街中は混雑してホテルにはタッチアンドゴーで第23回ITS世界大会開会式へと到来し、漸くお仕事も幕開けとなった。開会前から奏でられるディジュリドゥの調べと続くアボリジニの民族舞踊には色濃いデジャブ感があったが、振り返りみれば今回の旅でステレオタイプの豪州色に触れたのはこの一瞬だけだったろう。
h697.jpg 英語で繰り広げられるセレモニーには西洋梨なので暫し抜け出してみるものの、お台場風情の恐らくは新興開発地区に設けられたコンベンション・センターの周囲は人工的な街区が拡がるのみで手持ち無沙汰に他ならない。僅かに戦艦三笠宜しく係留された帆船が海辺風情を醸し出していただろうか。
h698.jpg サマータイムにも拘わらず些か寒さが身に染みるのは風の悪戯と思いきや、昨日は棒振りもままならぬ強風に先発組は往生したらしい。そのまま毎度の大人数の公式夕食会は事務方テーブルなので気楽な旅路が続くのは有り難かろう。大量のカラマリのフライに大量の肉を消費して漸く朝からの空腹を満たせば、後は川沿いの夜景を覗いたり、同行の御仁と近隣のアイスクリームを賞味したりと好き放題である。
 更にホテルに移動して元大臣と政府代表として現れた高官と、一泊のみの貴重な一夜を活かして二次会とは立派に海外出張の元手を回収しているではないか。
 又もやマウンテンデューを調達し、需要過多の折、妙に豪奢な部屋にて大の字になる。長い様で実際に長い一日と半ははや終わりを告げようとしている。

8月2日(火) 跳ねるはカンガルー  -海外情報 - オーストラリア-

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コアラはカメラ目線
 帰国の朝に気球を嵌め込むプランもあったが高額のため見送ったところ、マッサージ師から「発熱気味」と指摘された公資が事実38度台に至っていたから懸命だったろう。幸い薬が効いて朝には平熱を回復し、日々ロハのクロワッサンだけで済ませてきた朝食もホテルのバイキングと最期の贅沢に預かり、帰国の途に付いた。
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ブーメラン・ストリート
 余った豪弗は空港で飲食物に換え、準備万端乗り込んだ機内は、今度は機能していたモニターに10ドル払って映画三昧、パンフレットは八月に切り替わりながら中身は前月仕様のアバウトさこそあれ、睡眠を求められなければ座席の狭さもギリギリの許容範囲だったろう。前後を修学旅行生と家族連れに挟まれた祐旭は余りの煩さに値を上げそうだった様だが。
 これまでの南の島では何れも「地球の歩き方」と「るるぶ」に首っ引きで寸暇を惜しんで移動を続けてきたおかげで、掘り出し物を発掘する幸運にも見舞われる替わりに、タイミングを逸したり変化球を狙い過ぎて外したりも決して少なく無かったが、定番スポットが固定されているケアンズではツアーに身を委ねたのが、些か財布の紐は緩くなったとはいえ優雅に網羅出来て正解だったのではないか。
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こちらがARMY DUCK
 よくよく思い返せばナイトマーケットでは邦人学生がワーキングホリデーのバイトで雇われる位だから、リゾートの仮面から一歩街を外れれば実は裏物価が存在するのかも知れないが、逆に白人の存在は海辺の公園擬きを散歩した際にしか認識出来なかったに近い。その肝はわが国との一時間の時差にあり、おかげで帰着は夜半になっても翌朝から通常通り出社し、よく言えば政権の安定性を体現する様な総花的な組閣への対応に始まり、夜の宴席まで何事も無かったかの如く日常に回帰出来るのが、珊瑚海海戦の空軍基地変じて日本向けリゾートに生まれ変わったケアンズの味噌たろう。
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中央がモジモジ君
 何よりも程好い暑さと終始天候に恵まれたのは日頃の行いの賜物と自負するのは能天気に過ぎるとしても、受験三昧の一年間を乗り切った御褒美と受け止めたい。夜毎の肉食で更にふくよかになったろう公資には帰国すればサピックスの日々が待っている。

 なお今般のお題のひとつだった自撮りは、新調したリコー機はレンズよりもモニターに視線が及んで仕舞うきらいがあり、旅を通じて傾向と対策は掴んだものの残念ながらフラッシュが装備されていない為、全天候に映えるには至らない。
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キュランダ駅にて
 そこで自撮り棒だが、スマホならばシャッターを切るところまで配線が為されていても、通常のデジカメではセルフタイマーに頼らざるを得ず、20世紀に回帰した如くアナクロな展開を迫られた。しかも絞り値の測定に難ありが伺われ、中途からは幾度試みても露出オーバー続きでこちらは結局解決に至らぬままである。今後に課題を残し、まず一幕を閉じよう。
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